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【テンプレート付】クロスSWOT分析とは?フレームワーク活用の目的や流れ、ポイントを解説!

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クロスSWOT分析とは?

クロスSWOT分析とは、従来のSWOT分析をさらに発展させ、自社の強みや弱み、外部環境の機会や脅威を掛け合わせて戦略立案につなげるためのフレームワークである。単なる現状整理ではなく、強みと機会を結びつけて成長戦略を描いたり、弱みと脅威を掛け合わせてリスク回避策を検討するなど、実行可能なアクションを導き出せる点が特徴である。

クロスSWOT分析を活用することで、主観的な判断に偏ることなく多角的かつ客観的に自社を取り巻く状況を把握しやすくなる。本記事では、クロスSWOT分析とは何かという基本からクロスSWOT分析のやり方やテンプレート、ポイントなどを紹介する。

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そもそもSWOT分析とは

クロスSWOT分析について説明する前に、前提となる「SWOT分析」について説明したい。SWOT分析とは、企業や事業の現状を多角的に整理し、今後の戦略を立てるために広く活用されるフレームワークである。

内部環境として自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)を洗い出し、競合優位性や改善課題を明確にする一方、外部環境として市場や業界の変化における機会(Opportunity)と脅威(Threat)を抽出し、成長の可能性や潜在的リスクを把握する。

SWOT分析とは

例えば、自社の技術力やブランド力といった強みを活かしながら、新しい市場ニーズという機会を捉える戦略を構築することが可能になる。また、生産効率の低さや人材不足といった弱みを補いながら、競合の台頭や規制強化といった脅威に備える方向性を検討することにも役立つ。

SWOT分析の最大の利点は、主観的な思い込みにとらわれず、内部と外部の両面から自社を客観的に見つめ直せる点にある。これにより、現状把握にとどまらず、実行可能で現実的な戦略立案へと結びつけることができる。

クロスSWOT分析とは

クロスSWOT分析とは、SWOT分析によって整理した自社の強み・弱みと、外部環境における機会・脅威を掛け合わせ、より実践的な戦略を導き出すための手法である。単なる現状整理にとどまるSWOT分析に比べ、クロスSWOT分析は戦略立案への具体的なステップに直結する点が特徴だ。

クロスSWOT分析とは

例えば、強みと機会を組み合わせることで積極的な成長や攻勢戦略を描き、弱みと機会を結び付ければ弱点を補いながら市場機会を捉える改善策を見いだせる。また、強みと脅威の組み合わせからは、既存の競争優位を活かして外部リスクに備える防御策が考えられ、弱みと脅威の組み合わせでは最悪のシナリオに対応するリスク回避策を構築できる。

これにより、企業は内部資源と外部要因を統合的に評価し、実行可能かつ現実的な戦略を設計することが可能になる。クロスSWOT分析は、経営戦略や事業計画、研究開発の方向性を定める際にも有効であり、客観的かつ多角的な意思決定を支える重要なフレームワークだといえる。

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クロスSWOT分析における4象限

クロスSWOT分析では、内部と外部の要因を掛け合わせた4つの戦略パターンが導き出せる。ここではその4象限を紹介する。

強み×機会(SO戦略)

SO戦略

「強み×機会(SO戦略)」は、クロスSWOT分析の中でも最も積極的な成長を目指す攻勢型の戦略である。これは自社が持つ技術力やブランド力、販売網といった強みを活かし、市場拡大や新規需要の増加、規制緩和や国際的な需要の高まりなど外部環境における機会を最大限に取り込むことを目的とする。

例えば、研究開発力を強みに持つ企業が新市場に向けて製品を開発したり、強固な流通網を持つ企業が海外市場に進出したりすることが具体例である。SO戦略では、既存の強みをさらに強化しつつ、チャンスを逃さず事業を拡大させることが重要であり、将来の持続的な成長を支える基盤を築く有効なアプローチだ。

強み×脅威(ST戦略)

ST戦略

「強み×脅威(ST戦略)」は、クロスSWOT分析において自社が保有する強みを活かしながら外部環境に存在する脅威へ対応し、その影響を最小限に抑える防御型戦略である。例えば、競争の激化や価格下落圧力、規制強化や代替技術の登場といった脅威に直面した場合でも、高い技術力やブランド力、豊富な販売チャネルといった強みを用いて差別化や品質向上を図ることで市場での優位性を維持できる。

ここで重要なのは、現状を守るためだけでなく、強みを武器に脅威を跳ね返す戦略を構築する視点である。つまり、単なるリスク回避にとどまらず、持っている資産や能力を最大限に活用し、競合との差異化を実現することで、外部要因に揺らがない安定した事業基盤を築くことが目的だ。

弱み×機会(WO戦略)

WO戦略

「弱み×機会(WO戦略)」は、クロスSWOT分析において自社が抱える弱みを改善・克服しながら、外部環境に存在する機会を活かす成長型戦略である。例えば、人材不足という課題を持つ企業が業界の拡大や新規需要の高まりといったチャンスを逃さないために、教育制度の充実や採用体制の強化を進めることが挙げられる。

弱点を放置すればせっかくの市場機会を十分に取り込めないため、改善活動そのものが成長への布石となる。この戦略では、弱みを補強するプロセスを通じて新たな競争力を生み出し、外部の追い風を最大限に取り込むことが重要だ。すなわち、自社の脆弱性を改善することが成長の起点となり、潜在的な市場機会を確実に成果へとつなげる道筋を作ることを目的とする。

弱み×脅威(WT戦略)

WT戦略

「弱み×脅威(WT戦略)」は、クロスSWOT分析における4象限の中でも最もリスクの高い領域に位置する防衛的戦略である。自社の弱みと外部の脅威が重なった場合、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性が高いため、撤退や縮小、リスク分散といった消極的な選択肢が中心となる。

例えば、競合が強い市場において資金力や技術力に劣る企業は、無理な拡大ではなく事業の縮小や集中を選択することで被害を最小化できる。この戦略では、危機のシナリオをあらかじめ想定し、回避策や代替策を準備しておくことが重要だ。同時に、弱みを改善する取り組みを進めることで、将来的により積極的な戦略に移行できる可能性を残すことも求められる。

すなわちWT戦略は、現状のリスクから身を守りつつ、未来への布石を打つための現実的な対応策だといえる。

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クロスSWOT分析を行う目的とメリット

クロスSWOT分析を行う目的は、単に自社の強みや弱みを整理するだけでなく、それらを外部環境の機会や脅威と組み合わせて具体的な戦略に落とし込むことである。内部要因と外部要因を掛け合わせることにより、強みを活かして市場のチャンスを最大限に取り込み、同時に弱みを補いながら外部の脅威を回避する方向性を明確にできる。

この手法の最大のメリットは、現状分析から実際の行動指針へとつなげられる点だ。さらに、経営資源が限られる中でも効果的に活用するための優先順位を明確にでき、競争優位性の確立とリスク管理の両立を図ることが可能となる。

また、自社を取り巻く環境と内部資源を総合的に整理することで全体像を把握しやすくなり、攻めと守りの戦略をバランスよく検討できるため、意思決定の精度が高まる。加えて、分析結果を組織内で共有することにより、共通認識が形成され、戦略実行に一貫性を持たせられる点も大きな利点だといえる。

クロスSWOT分析のテンプレート

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クロスSWOT分析の流れとやり方

クロスSWOT分析は順序立てて進めることで効果を発揮するフレームワークである。ここでは4つのステップを紹介する。

目的を明確にする

クロスSWOT分析の最初のステップとして目的を明確にすることは、戦略立案を効果的に進めるための前提条件である。目的が曖昧なまま分析を始めると、収集する情報や抽出される強み・弱み、機会・脅威が散漫になり、結論として導かれる戦略も具体性を欠きやすい。

例えば、新規市場参入を目的とするのか、既存事業の改善を目指すのかによって注目すべき要素は大きく異なる。目的を先に設定すれば、必要なデータや視点が明確化され、分析の方向性が定まり、フレームワーク全体が実際の行動に直結する実効性の高いものとなる。

SWOT分析を行う

第2ステップ目は、SWOT分析の実行だ。SWOT分析を通して内部環境における強みや弱みを抽出することで、自社の競争優位性や改善すべき課題が明らかになり、外部環境における機会や脅威を洗い出すことで、成長の余地や潜在的リスクを可視化できる。

例えば、独自技術やブランド力が強みであれば、新市場開拓の基盤となり、人材不足が弱みであれば育成や採用強化が必要となる。このようにSWOT分析は、後のクロス分析で戦略を導き出すための基盤となり、精度の高い意思決定につながる。

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結果を掛け合わせる

クロスSWOT分析の「結果を掛け合わせる」ステップは、SWOT分析で整理した内部要因(強み・弱み)と外部要因(機会・脅威)をマトリクス上で組み合わせ、具体的な戦略に落とし込むために行う。例えば、強みと機会を掛け合わせれば成長を加速させる攻勢戦略が生まれ、弱みと脅威を掛け合わせれば撤退やリスク回避策といった防衛的戦略が導かれる。

この掛け合わせによって、単なる要素の整理にとどまらず、企業が取るべき具体的なアクションを明確化できる。抽象的な環境分析を現実的な行動指針へ転換する重要なプロセスであり、経営資源の効果的な活用や意思決定の精度向上に直結する点が特徴だ。

戦略を決める

クロスSWOT分析の最終ステップである「戦略を決める」ことは、抽出した要因を実際の経営行動へとつなげるために不可欠だ。強みと機会を活かす攻勢戦略や、弱みと脅威に備える防御戦略など、掛け合わせによって導かれた複数の戦略案を精査し、実現可能性、優先度、経営資源との適合性を基準に取捨選択する必要がある。

さらに、戦略は短期的施策と中長期的ビジョンの両面から検討され、組織全体が一貫して実行できる形に整理されなければならない。このプロセスを経ることで、分析は単なる理論に留まらず、成長施策やリスク対策として実効性を持つ経営指針へと転換されるのだ。

クロスSWOT分析の活用事例

クロスSWOT分析の理解を深めるには、企業事例を見るのも効果的だ。ここでは代表的な3つの企業の活用例を紹介する。

トヨタ自動車の例

内部環境
強み弱み
外部環境機会世界屈指の生産技術力とブランドを活かし、拡大するEV市場や環境規制強化に対応EV分野での遅れを克服し、急成長する市場機会を活かす
脅威グローバルブランドや生産力を活かし、競合のテスラや中国新興メーカーとの差別化を図るEV分野での遅れが競合台頭によってさらに不利になるリスクを軽減

トヨタ自動車のクロスSWOT分析の活用事例を考えると、まず内部要因として強みには世界屈指の生産技術力とグローバルブランド、弱みにはEV分野での立ち遅れがある。一方、外部要因では機会として急速に拡大するEV市場や環境規制強化、脅威としてはテスラや中国新興メーカーの台頭が挙げられる。

クロス分析の結果、強み×機会ではハイブリッド技術を基盤とした電動化戦略の加速が有効であり、弱み×脅威では研究開発投資や海外での競争力強化が求められる。これによりトヨタは既存の強みを活かしつつ弱点を克服し、持続的競争力を維持・向上させる戦略を構築できるのである。

スターバックスの例

内部環境
強み弱み
外部環境機会世界的ブランド力と商品開発力を活かし、新市場や需要を取り込む北米依存やオペレーションの複雑化といった弱みを克服し、新たな市場機会を活かす
脅威ブランド力とグローバル展開力を活かし、外部リスクに対抗弱みが脅威と結びつくと競争力低下のリスク

スターバックスのクロスSWOT分析の例を考えると、まず強みとしては世界的に確立されたブランド価値や顧客ロイヤルティ、商品開発力とグローバル展開力が挙げられる。一方、弱みには北米市場への依存や価格上昇による利用者離れ、オペレーションの複雑化がある。

外部環境では、中国市場の拡大やプラントベース商品の需要増加、RTD市場の拡大といった機会が存在し、脅威には競合カフェの台頭、インフレやコーヒー豆価格の高騰、人材不足がある。

クロス分析により、強み×機会ではブランドと商品開発力を活かした中国市場やRTD市場での成長戦略が導かれ、弱み×脅威ではオペレーション効率化や低価格帯商品の強化が求められる。このようにスターバックスは強みを拡大しつつ弱みを克服することで、持続的な競争優位を築いているといえる。

ユニクロの例

内部環境
強み弱み
外部環境機会ブランド力とSPAモデルを活かし、海外市場や高級ブランドコラボで成長を拡大在庫課題や商品の個性不足を克服し、海外需要やコラボ機会を取り込む
脅威SPAモデルの効率性を武器に競合増加や市場鈍化に対抗在庫過多リスクを抑え、商品多様化で競合との差別化を進める

ユニクロのクロスSWOT分析の例を考えると、強みには高いブランド力と製造小売業(SPA)モデルによる効率的な商品開発・販売体制がある。一方、弱みとしては在庫システムの課題や、ベーシックな商品が多いため個性を出しづらい点が挙げられる。

外部環境においては、海外市場での需要拡大や高級ブランドとのコラボレーションによる新規顧客層の獲得といった機会が存在する一方で、競合アパレル企業の増加や国内市場の成長鈍化といった脅威もある。クロスSWOT分析に基づくSO戦略としては、ユニクロが培った独自のブランディング手法を国際市場で積極的に展開し、成長機会を最大限に活かすことが考えられる。

この戦略によりグローバル市場での存在感をさらに強め、持続的な成長を実現できるといえる。

クロスSWOT分析を行う際の注意点やポイント

クロスSWOT分析を効果的に進めるためには、目的の設定や戦略の取捨選択、さらには時間的視点を取り入れることが欠かせない。

目的を明確にする

目的を明確にする理由は、分析結果を実際の戦略立案に直結させるためだ。目的が不明確なままでは、強みや弱み、機会や脅威の抽出が広すぎたり偏ったりし、現実の課題や市場環境に合わない表面的な分析に終わってしまう。

例えば新規事業を検討するのか、既存事業の強化を目指すのかといった目的を最初に定めることで、注目すべき要素が明確になり、戦略の方向性もぶれなくなる。逆に目的を曖昧にすると、掛け合わせて導かれる戦略も実効性に乏しく、意思決定の材料として活かせない。

戦略に優先順位をつける

戦略に優先順位をつける理由は、限られた経営資源を有効に活用し、実行可能性と効果を最大化するためである。分析からは複数の戦略案が導かれるが、それらすべてに同時対応することは現実的に困難であり、資金や人材が分散すれば成果が薄れる危険がある。

そのため、自社の経営資源や市場環境に照らして、重要度や緊急度の高い戦略から着手する必要がある。優先度をつけずに進めると戦略が乱立し、焦点が定まらず時間やコストの浪費につながりやすい。ただし、どれかひとつの戦略に絞らなければならないというわけではないし、現状を維持する「何もしない」という選択も戦略のひとつだということも忘れてはいけない。

時間軸をずらして分析する

時間軸をずらして分析する理由は、戦略の持続性を高め、将来の環境変化に柔軟に対応するためである。現時点での強みや機会も、市場動向や規制の変更、技術革新によって弱みや脅威に転じる可能性がある。時間軸を考慮せずに分析すると短期的な戦略に偏り、長期的には市場の変化に対応できず戦略が陳腐化する危険がある。過去・現在・未来を比較することで、自社が直面する環境の変化点を把握しやすくなる。

例えば急成長市場では、過去の未成熟期との違いや将来の法改正の影響を考慮することで、機会や脅威の変化をより的確に捉えることができる。時間軸をずらして分析することにより、変化に強く持続可能な戦略立案が可能となる。

研究開発こそクロスSWOT分析を活用すべき

研究開発こそクロスSWOT分析を活用すべきだ。従来の研究開発は既存事業の延長として技術の改良や一つの技術を深掘りすることに重点が置かれてきたが、新規事業開発ではその枠を超えた発想やアプローチが求められる。特に、将来的に価値を生む研究開発テーマを創出する段階では、単なる技術的可能性の評価にとどまらず、事業性や市場性を加味した判断が欠かせない。

クロスSWOT分析は、自社の強みや弱みと外部環境の機会や脅威を掛け合わせることで、筋の良いテーマを見極めるためのフレームワークとして有効である。定量データだけでは見落としがちな顧客ニーズや競合動向といった定性的な要素も含めて整理することで、研究の方向性を客観的に捉えることができる。結果として、研究開発部門における意思決定が戦略的に行われ、新規事業や新製品の成功可能性を高められるのだ。

SWOT・クロスSWOTテンプレート

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