センシングとは、温度、光量、心拍数、振動など、現実世界に存在するさまざまな情報を検出・取得し、それらをデータとして扱うための技術だ。センシングは単なる情報収集にとどまらず、取得データをAIやIoTと組み合わせて活用することで、意思決定や自動化にまでつながる技術へと進化している。社会や産業の構造を変革するキーテクノロジーとして、工場や医療、農業、スマートシティなど多くの分野で効率化・省力化・安全性の向上・新たな価値の創出などに貢献している。本記事では、センシングの基本的な仕組みと、メリット・デメリット、活用例などについて解説していく。
センシング技術を活かした新しい製品やサービスの開発には、用途開発のノウハウが不可欠!
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センシングの意味とは?
センシングとは、各種センサーや測定機器を用いて、温度・圧力・振動・化学濃度・生体情報などの物理的・化学的・生物的特性を定量的に取得し、モニタリング・制御・予測などに活用する技術だ。この技術は、製造業や農業、医療、自動車産業など多岐にわたる分野で、設備管理や作業状況の可視化、品質管理の高度化などに貢献している。
センシングには大きく2つの種類がある。
1つがスマートセンシングだ。スマートセンシングとは、従来の単純なセンサー機能に加えて演算処理や通信機能を持つセンサーを用いて、取得したデータをリアルタイムに処理・送信・判断できる高度なセンシング技術を指す。製造現場では、設備の状態監視や異常検知、予知保全などに活用されている。
もう1つのリモート(無線)センシングは、人工衛星やドローンなどを用いて対象物に直接触れることなく遠隔からデータを取得する技術のことを指す。土壌や水質のモニタリングやインフラの維持管理などに活用されている。

センシングとセンサーの違い
センサーは、温度、圧力、光、音といった物理的・化学的・生物的な特性を検出し、それらを電気信号などの読み取り可能な形式に変換する装置のことだ。具体的には、地磁気を検出する電子コンパスやイメージセンサーを備えたカメラ、距離を計測するLiDAR、温度や歪みを感知する光ファイバーセンサーなどのデバイスや機器が挙げられる。
一方、センシングは、これらのセンサーを用いてデータ収集を行い、その情報を解析・処理して有用な形に変換する一連の技術やプロセスを指す。
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センシング技術の種類
センシング技術の種類は実に多種多様だ。ここでは代表的な例をいくつか紹介する。
圧力センサー
気体や液体などの圧力を測定し、その変化を電気信号として出力するセンサー。自動車のエンジン制御や医療機器の安全管理、産業プラントの監視など幅広い分野で活用されている。
温度センサー
物体や環境の温度を測定し、電気信号として出力するセンサー。測定対象にダイレクトに接触して温度を測る「接触型」と、赤外線を利用して物体の表面温度を検出する赤外線温度センサー(IRセンサー)などの「非接触型」の2つがある。
GPS
GPSは、地球上空約2万kmを周回する複数の人工衛星からの信号を受信し、現在位置を高精度に測定する衛星測位システムのことである。GPSレシーバーやGPSモジュールと呼ばれる受信機がスマートフォンや車載機器に搭載され、測位データは移動体のセンシングにも広く活用されている。
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光センサー
光の強さや波長を検出し、それを電気信号に変換する装置の総称だ。光センサーは多様だが、投光器と受光器を対向配置し、投光器から発せられる光が受光器に届くかどうかで検出する「透過型」と、投光部からの光が物体に当たった際に生じた反射光を受光部で受け取ることで検出する「反射型」が多く使われている。
音センサー
周囲の音波を検出し、それを電気信号に変換するセンサーだ。代表的なものにマイクロフォンがあり、音の有無や音量だけでなく、音の周波数成分や波形も検出できる。この技術は、音の有無や音量の変化を感知し、防犯アラーム、騒音モニタリング、音声認識、故障診断などさまざまな機器やシステムに応用されている。
振動センサー
対象物の振動を検出し、それを電気信号に変換することで振動の大きさや周波数を測定するセンサーである。主な種類としては、加速度センサー(加速度計)、速度センサー(振動速度計)、変位センサー(振動変位計)などが挙げられる。特に加速度センサーは積分処理により、速度や変位(位置のずれ)の推定も可能で、幅広く用いられている。
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画像センサー
光を電気信号に変換して画像データを取得するセンサー。主にCCDセンサーやCMOSセンサーの形式があり、カメラやスマートフォン、監視カメラ、医療機器、自動運転車など、さまざまな機器に搭載されている。人間の目に相当する役割を果たし、光の明るさや色の情報を捉えることで視覚情報をデジタル化している。
風量センサー
風量センサーは、空気やガスの流量を測定するための装置である。主な種類には差圧式や熱式、超音波式などがあり、空調設備や換気システム、工業プロセスの管理、クリーンルームや環境モニタリングなどに幅広い分野で使用されている。
水位センサー
水面の高さを検知し、その情報を電気信号として出力するセンサーだ。代表的な種類には圧力式、超音波式、浮子(フロート)式、静電容量式、光学式などがあり、河川の水位監視やダムの貯水管理、工場のタンク液面制御、家庭用の給水システムなど幅広い分野で利用されている。用途や環境に応じて最適な方式が選ばれる。
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センシングを導入するメリット
センシングは、人間が感知できない微細な情報を検知し、それをデータとして出力する。この一連のプロセスは、設備保全や点検業務の効率化だけでなく、業務の高度化や新サービスの創出などにも生かすことができる。
設備保全・点検業務を省力化できる
センシング技術の導入は、設備保全や点検業務の省力化において大きな効果を発揮する。従来、設備点検は人間の五感や経験に依存しており、点検作業の見落としや膨大なデータの記録・分析の効率化など、さまざまな課題が存在していた。しかし、センサーやIoT技術の登場によって、設備の状態を常時監視し、異常の予兆を検知したり、点検データを自動で記録・分析できるようになっている。このような変化は、製造業やインフラ保全、建物管理などさまざまな現場で省力化・効率化を実現し、人的ミスの削減や保守の高度化にもつながっている。
高精度の情報をリアルタイムで取得できる
近年のセンサーは、微細な物理的変化や化学的特性を高い精度で検出できるよう進化している。製造業では製品の傷や欠陥、設備の振動や温度といった微細な変化や異変をリアルタイムで高精度で検出することが可能だ。特に画像センサーやMEMSセンサー、IoTネットワークとの組み合わせによって、常時監視や自動検出が実現されている。
業務の高度化・新しいサービスの創出
高精度なデータをリアルタイムで取得したのちにAIやIoTと連携させることで、従来の業務プロセスを革新し、さらに新たなビジネスモデルも構築が可能となりつつある。
近年は、人工衛星によるリモートセンシング技術も飛躍的に進歩しており、地表だけでなく森林や海面といった広域環境のモニタリングが可能になってきた。さらに、水中ドローンや地中センサーなどと連携することで、従来では困難だった地下や海洋環境といった範囲まで観測ができ、製造業のみならず、農業、医療、物流、都市インフラなど、さまざまな業種で新しいサービスや事業の創出が進むだろう。
センシングの課題・デメリット
センシングは、さまざまな社会問題を解決できる可能性を秘めた技術ではあるものの、現状では、センシングから得られるデータの管理や解析は非常に難しく高度な技術が求められる。さらに、容易にデータ収集ができてしまうことで、プライバシー侵害の危険性や犯罪などに悪用されるリスクも孕んでいる。
導入コストが高い
導入コストには、センサー機器の本体価格だけでなく、設置作業、システム統合、データ処理インフラの整備、運用・保守に関わる費用も含む。さらに、医療分野や航空宇宙分野といった産業では厳格な規制や認証が求められる。これらの認証取得には数百万ドルの費用が発生することがあり、さらに導入コストを押し上げる要因となっている。
直面する技術の課題をどうクリアするか?
解決のヒントは「情報」にある!
技術課題を解決するための情報収集のポイントとは?
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データの管理や解析が難しい
デバイスの故障やノイズなどによって正しいデータが取得できていないと、分析結果や判断に誤りが生じる恐れがある。また、異なるセンサー仕様や記録形式が用いられているため、統合的かつ横断的に解析するためには、データの前処理、時系列同期、フォーマット統一などを含む高度なデータ管理スキルが求められる。
プライバシーやセキュリティの懸念
センシングは、個人の行動や位置情報、環境情報などをリアルタイムで収集できるが、個人情報の漏えいや不正利用のリスクと常に隣り合わせであることは認識しておかなければならない。特にスマートフォン、ウェアラブルデバイス、スマートシティ関連の実証実験などでは、意図せず個人が特定される事例も報告されており、社会的な懸念も大きい。収集したデータの保存や共有方法にも慎重を期し、必要最小限のデータ取得や匿名化・仮名化技術(例:k-匿名性、差分プライバシー)の活用が求められる。
こうした課題を正しく把握し、効果的に対処するためには、信頼性の高い情報収集が欠かせません。本資料では、技術課題を解決に導くための効率的な情報収集の4つのチェックポイントをわかりやすく解説しています。安全かつ安心してセンシングを活用するための第一歩として、ぜひご活用ください!
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センシング技術の活用事例
最後に、センシング技術を活用した代表的な事例について解説する。
医療分野
患者の生体情報をリアルタイムで取得することで、診断の精度向上や治療の効率化、さらには患者のQOL(生活の質)の改善にも大きく寄与している。たとえば、ウェアラブルデバイスに搭載された心拍センサーや加速度センサーは、継続的に患者の心拍数や運動量をモニタリングし、ペースメーカーの最適制御支援や不整脈の早期発見、リハビリ効果の評価に活用されている。これにより、患者自身が健康状態を把握しやすくなり、通院負担の軽減や自己管理の促進を通じてQOL向上につながっている。
自動者分野
自動運転技術には、LiDAR、ミリ波レーダー、カメラ、GPS、加速度や角速度を計測する慣性計測装置(IMU)といった多様なセンサーが用いられている。これらのデータを組み合わせて解析・統合することで、車両の正確な位置推定、障害物検知、道路標識の読み取り、周囲環境の把握が可能となり、レベル3以上の自動運転技術の実現に貢献している。
農業分野
土壌の水分量や温度をリアルタイムで測定できるセンサーを用いることで、最適な作物の生育環境を作ることができる。たとえば、土壌センサーが収集したデータをもとに自動バルブを制御する灌漑システムを導入すれば、水の過剰供給や不足を防ぎ、作物の生育を安定させることが可能となる。また近年では、土壌の栄養状態(pHや電気伝導度など)を測定する技術も一部実用化されつつある。
広告分野
顧客の購買履歴や行動パターンなどをリアルタイムに取得することで、より精緻でパーソナライズされた広告の配信が可能となる。たとえば、店舗内に設置されたカメラや赤外線センサー、動作検知センサーなどの複数の情報を統合解析し、顧客の興味関心を推測。最適なタイミングでデジタルサイネージやスマホアプリへ広告を表示することで、顧客のニーズに合わせた双方向的なコミュニケーションが促進できる。
まとめ
センシング技術は、社会のあらゆる分野においてデータ駆動型の意思決定を可能にする基盤技術だ。その応用範囲は医療や農業、製造業から都市インフラ、さらには日常生活にまで広がっている。今後もセンサーの小型化や高性能化、AIや通信技術との連携によってセンシングの可能性は一層拡大していくことが期待される。
