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2026.01.27 #製造業 #半導体 New!

なぜ台湾は半導体大国に成長したのか?歴史や半導体メーカー・企業などを詳しく解説

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世界のデジタル経済を支える基盤として、台湾の半導体産業は欠かせない存在となっている。

最先端の製造技術や高い世界シェアは偶然の産物ではなく、国家の生存戦略として積み重ねられてきた歴史と、独自の産業構造の成果である。しかし、その成長の過程や、どのような企業がどんな役割を担っているのかを体系的に理解できている人は多くないだろう。

本記事では、台湾がなぜ半導体大国へと発展したのかを、戦後の政策背景から産業集積の仕組み、主要プレーヤーの特徴までを解説する。

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台湾における半導体業界の歴史と起源

第二次世界大戦後の台湾は米国の支援で復興したが、1960年代に援助の縮小が進み、台湾は経済的な自立を迫られ積極的な外資導入策をとらざるを得なかった。その象徴が1966年に開設された高雄輸出加工区(EPZ)で、アメリカのGeneral Instrumentsが出資した高雄電子公司が、台湾で最初のトランジスタやICなどの半導体組み立て工場を建設した。

1970年代には半導体の後工程分野で萬邦電子(現:華新科技)や華泰電子、菱生精密工業などの企業が設立されているが、産業を飛躍させた起点は1974年の「豆漿(トウジャン)会談」と呼ばれる朝食会議で、政府要人がIC産業を国家戦略として育成する方針を固めたとされる。

1976年にはITRIがRCAと技術移転契約を結び、若手技術者を米国で訓練して基盤技術を内製化。1980年にはITRIからUMCがスピンオフし民間IC産業が立ち上がり、1987年にモリス・チャンがTSMCを設立したことで、ファウンドリ特化モデルが確立し新竹の産業集積が結実した。

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世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」の誕生と隆盛

世界最大の半導体ファウンドリであるTSMC(台湾積体電路製造)の誕生は、創業者である張忠謀(モリス・チャン)の異色の経歴と戦略的洞察に端を発する。

チャン氏はハーバード大学で1年学んだ後にマサチューセッツ工科大学へ転じ、機械工学の修士号を取得。その後、当時急成長中だったテキサス・インスツルメンツに入社し、半導体エンジニアとして頭角を現すと、国際半導体事業部門のグループ副社長まで昇進した。

そして、1985年、台湾の「半導体の父」と呼ばれる李國鼎氏の熱心な誘いを受け、チャン氏は政府系研究機関である工業技術研究院(ITRI)の院長に就任する。そんな中、チャン氏は当時の台湾が設計能力では劣るものの製造技術に勝機があることを見抜き、自社ブランドを持たずに受託製造に徹する「ファウンドリ」という独自のビジネスモデルを考案した。

当初は前例のないモデルゆえに資金調達は困難を極めたが、最終的にオランダのフィリップス社からの出資を取り付け、1987年にTSMCの創業に至った。その後、1990年代に入り、シリコンバレーを中心に設計特化型のファブレス企業が急増したことが追い風となり、同社は爆発的な成長を遂げ、現代の半導体産業を支える不可欠な存在となっている。

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なぜ台湾は半導体業界が強いのか?

台湾が半導体業界で強さを発揮する最大の理由は、国家戦略として選択した産業モデルと、それを徹底的に磨き上げてきた点にある。

1980年代、国際的な制約を受ける中で台湾政府は、設計と製造を分業する水平分業を推進し、製造受託に特化するファウンドリモデルを確立した。これを体現したのがTSMCであり、自社製品を持たず製造に専念することで、世界中の設計企業と競合せず信頼を獲得した。

このモデルは顧客基盤を急速に拡大させ、規模の経済による技術進化を可能にした。また、新竹サイエンスパークを中心に設計、製造、装置、材料、検査が地理的に集積し、試作から量産までを短期間で回せる供給網が形成された。

近年はAI向け需要の急拡大を背景に、先端プロセスへの巨額投資を継続し、技術優位を維持している。こうした官民一体の長期視点と分業モデルの最適化こそが、台湾の競争力の源泉である。

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台湾が占める半導体業界の世界シェアはどのくらい?

2026年現在、台湾は世界の半導体産業において中核的な地位を占めており、とりわけ製造分野では他国を大きく引き離している。製造数量ベースで見ると、世界で生産される半導体の6割以上が台湾で作られているとされ、量・質の両面で世界最大の製造拠点となっている。

中でもAIや高性能コンピューティング向けに不可欠な7ナノメートル未満の先端ロジック半導体では、その比率はさらに高まり、世界シェアは9割超に達する。これは先端プロセスを安定して量産できる企業が事実上台湾に集中していることを意味する。

この圧倒的な存在感を牽引しているのが、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCである。市場調査会社TrendForceによれば、2025年第3四半期における世界のファウンドリ市場で、TSMC単独の売上高シェアは約71%に達した。

ファウンドリ市場自体が先端ロジック半導体の供給を担う中核領域であることを踏まえると、この数字は台湾が受託製造分野でほぼ支配的な立場にあることを示している。さらに台湾の強みは前工程にとどまらない。

半導体の組立・検査を担う後工程分野でも、台湾企業は世界シェアの約5割を占めており、設計分野でも世界第2位となる約19%のシェアを有している。製造、後工程、設計というバリューチェーン全体で高い比重を占めている点が台湾の特異性であり、台湾の供給能力なしに世界のデジタル産業は成立しない構造が形成されているといっても過言ではない。

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TSMCだけではない!台湾にある半導体メーカー・企業・会社

台湾にはTSMC以外にも世界的シェアをもつ半導体メーカーや企業が存在する。ここでは、そのいくつかをピックアップして紹介したい。

TSMC(台湾積体電路製造)

TSMC(台湾積体電路製造)は、1987年にモリス・チャン氏によって設立された、世界最大の半導体受託製造専業企業である。自社ブランド製品を持たず、顧客の設計に基づく製造に特化するファウンドリモデルを確立し、設計を担うファブレス企業との競合を避ける中立性によって高い信頼を築いてきた。

2026年現在、同社は世界のファウンドリ市場で約6割のシェアを占め、特に5ナノメートル以下の先端ロジック半導体では9割超という圧倒的な製造能力を有する。AIやスマートフォン向けの高性能半導体供給を支える存在として不可欠であり、2ナノメートル世代の量産に向けた準備も進めている。

また、供給網の安定化を目的に日本、米国、欧州での生産体制構築を進めるなど、地政学リスクへの対応も加速させている。巨額の設備投資を継続し、世界経済を支える戦略的企業としての地位を確立している。

UMC(聯華電子)

UMC(聯華電子)は1980年に工業技術研究院(ITRI)から派生して設立された台湾の半導体受託製造(ファウンドリ)企業である。TSMCが先端微細化を牽引する一方、UMCは28nmや22nmなど成熟プロセスを主戦場に、通信機器、IoT、自動車、産業用途向けの安定供給で存在感を持つ。

TrendForceによれば2025年第3四半期のファウンドリ市場でUMCは4位、シェアは4.2%であった。供給網の分散ではシンガポールで12インチ新工場の建設を進め、米国ではIntelと12nmプラットフォームで協業する。

VIS(世界先進積体電路)

VIS(世界先進積体電路)は、台湾の新竹サイエンスパークで1994年に設立され、当初はDRAM事業を手掛けた後、2004年に受託製造へ転換したファウンドリ企業である。8インチ(200mm)ラインを軸に、パネルドライバーICや電源管理IC(PMIC)など、信頼性と供給安定性が重視される分野の製造に強みを持つ。

近年はNXPと合弁でVSMCを設立し、シンガポールで300mm工場建設を進め、2027年の初期生産開始、2029年に月産5万5,000枚規模を計画する。基礎プロセスはTSMCからライセンス供与され、運営はVISが担う計画である。

MediaTek(聯発科技)

MediaTek(聯発科技)は、1997年にUMCからスピンオフして設立された台湾最大級のファブレス半導体設計企業である。本社を新竹市に置き、自社で製造設備を持たず、TSMCなどのファウンドリに生産を委託する水平分業モデルを採用している。

スマートフォン向けSoCでは「Dimensity」シリーズを主力とし、電力効率とコスト競争力の高さから世界中の端末メーカーに採用され、出荷数量ベースでは世界トップクラスの地位を確立している。

2026年現在は、モバイルで培った高集積・低消費電力設計技術を応用し、AI処理向け半導体や車載分野への展開を強化している。エヌビディアとの協業による車載向けSoC開発や、Wi-Fi 7など次世代通信規格への対応を進めることで、スマートフォンにとどまらず、車載、IoT、PC、ネットワーク機器といった幅広い分野で存在感を高めている企業である。

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Novatek(聯詠科技)

Novatek(聯詠科技)は、1997年にUMC(聯華電子)の設計部門からスピンオフして設立された台湾のファブレス半導体設計企業である。本社は新竹市に置き、自社で製造設備を持たず、TSMCなどのファウンドリを活用する事業モデルを採用している。

主力分野はディスプレイ駆動IC(DDIC)であり、スマートフォン、テレビ、PCモニター向けを中心に世界トップクラスのシェアを有する。特にOLED向け駆動ICでは高精細表示と低消費電力を両立する設計力に強みを持ち、主要スマートフォンメーカーの製品に広く採用されてきた。

2026年現在は、ディスプレイ関連技術を基盤に、車載ディスプレイ用ICや映像処理技術など周辺分野への展開を進めている。映像表示の中核を担う半導体企業として、台湾半導体産業における重要な一角を占めている。

ASE Technology(日月光投資控股)

ASE Technology(日月光投資控股)は、1984年設立の半導体後工程(組み立て・封止、検査)を担うOSAT大手であり、世界最大級のパッケージング企業として知られる。

近年はAI向け需要を背景に、2.5D/3Dなどのアドバンスド・パッケージングや高度検査の拡充を進め、先端チップの実装基盤としての役割を強めている。供給網の分散では、日本で北九州(若松区)に用地を取得し、生産能力拡大を検討している。

さらに子会社USIを通じ、基板実装などのEMS領域も展開し、電子機器の量産工程まで含む体制を持つ。

KYEC(京元電子)

KYEC(京元電子)は、1987年に設立された台湾の半導体テスト専業受託企業であり、検査分野に特化したOSATとして世界最大級の規模を持つ。前工程や組み立て工程は担わず、完成した半導体が設計通りに動作するかを検証するテスト工程に集中している点が特徴である。

スマートフォン、5G通信、車載、画像センサーなど幅広い分野の半導体を扱い、高度な測定技術と設備を強みとしてきた。2026年現在はAIやHPC向け半導体需要の拡大を背景に先端テスト能力を強化している。

2024年には中国事業の売却を決定し、台湾を中心とした体制へ再編することで、地政学リスクを抑えつつ高付加価値分野への投資を進めている。

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WPG Holding(大聯大投控)

WPG Holding(大聯大投控)は、2005年に台湾で設立された半導体・電子部品分野に特化した世界最大級のディストリビューターである。世平興業や品佳など複数の有力商社を傘下に持つ投資持株会社として、アジア太平洋地域を中心に広範な販売・物流ネットワークを構築している。

2026年現在、AIやデータセンター向け需要の拡大を背景に業績を伸ばし、2025年度の通期売上高は約9,991億台湾ドルと過去最高を記録した。同社は部品供給にとどまらず、在庫管理や金融支援を含むLaaS型サービスを展開し、DXやAI活用による業務効率化も進めている。

主要半導体メーカー250社以上と連携し、製造から最終製品までを結ぶ流通基盤として台湾半導体産業を支えている。

台湾の半導体メーカーが日本で工場を建設している理由

台湾の半導体メーカーが日本で工場建設を進める最大の理由は、地政学的リスクの分散と経済安全保障の強化にある。

台湾有事への懸念が高まる中、製造拠点を台湾島外にも配置する台湾プラスワン戦略が不可欠となり、日本はその有力な受け皿となっている。日本には自動車や電子機器といった世界有数の需要産業が集積しており、顧客の近くで生産することで物流コストの削減や供給途絶リスクの低減が可能だ。

加えて、日本政府は半導体産業の国内回帰を国家戦略に位置付け、熊本の新工場に対する巨額補助金など手厚い支援策を講じている。これにより、日本特有の高い建設費や人件費の負担が相殺される。

さらに、熊本をはじめとする地域の豊富で安定した地下水、装置や材料分野で世界最高水準の技術基盤、熟練した労働力の存在も進出を後押ししている。こうした要素が重なり、日本は台湾半導体企業にとって戦略的に極めて重要な生産拠点となっている。

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まとめ

台湾が半導体大国へと成長した背景には、戦後の経済自立を目的とした国家戦略と、製造に特化した産業構造の確立がある。政府主導で研究機関と企業を育成し、ファウンドリという水平分業モデルを世界に先駆けて定着させたことで、設計企業や後工程企業を含む強固な産業集積が形成された。

その中核を担うTSMCをはじめ、設計、製造、検査、流通までを網羅する企業群が相互に補完し合い、他国にはない競争力を生み出している。地政学リスクへの対応や海外展開を進めながらも、台湾は今なお最先端半導体の供給拠点として世界経済を支えており、その動向は今後の産業戦略を考える上で重要な指標である。

2026年半導体市場予測

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