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2026.01.09 #製造業 #半導体 New!

TSMC(台湾積体電路製造)とはどんな会社か?半導体のシェア率や売上高、歴史など

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世界の先端半導体産業を語るうえで欠かせない存在が、台湾を拠点とする巨大な受託製造企業のTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー/台湾積体電路製造)である。

TSMCは半導体の設計を行わず製造に特化する独自の立ち位置を築き、スマートフォンやAI、データセンター向けの最先端チップを支えてきた。その成長の背景には、圧倒的な技術投資、長期的な研究開発戦略、そして世界中の企業から信頼を集める生産体制がある。

本記事では、TSMCがどのような歴史を歩み、なぜ業界で突出した地位を確立できたのかを整理し、売上規模や市場での存在感、近年の動向までを解説する。

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TSMC(台湾積体電路製造)とはどんな会社?

TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)は、1987年にモリス・チャン(張忠謀)によって設立された、世界最大の半導体受託製造企業である。正式名称は台湾積体電路製造で、設計を行わず製造に専念するファウンドリ専業モデルを確立した先駆者だ。

本拠地は台湾・新竹サイエンスパークにあり、台湾各地に加え米国や日本など世界各地で生産拠点を展開している。最先端から成熟プロセスまで幅広い製造技術を保有し、スマートフォン、AI、車載、データセンター向け半導体の供給を担う。

2024年時点の従業員数は約7万6000人規模で、巨額の設備投資と高い歩留まりにより業界で圧倒的な存在感を示している。

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TSMCとJASMの関係

JASMはJapan Advanced Semiconductor Manufacturingの略称で、TSMCが日本での半導体製造拠点を構築・運営するために、2021年に熊本県菊陽町で設立された合弁事業という位置づけだ。

出資比率は2024年2月時点でTSMCが86.51%を保有し、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車が参画している。JASMはTSMCの製造技術と運営ノウハウを基盤に、車載や民生向け半導体の受託製造を担う日本拠点として機能する。

第一工場は2024年12月に量産開始し、第二工場は2027年末の稼働が見込まれている。

TSMCが設立されるまでの歴史

TSMC成立の背景には、台湾が1960年代半ばに米国援助の縮小を受け、産業の高度化で自立を図った政策転換がある。1980年代には政府主導で半導体を重点産業とし、工業技術研究院(ITRI)を軸に技術と人材の基盤を整えた。

この流れの中で李國鼎(Li Kwoh-ting)が、米国TIで経験を積んだモリス・チャンを招き、設計を持たない企業の受託製造に専念するファウンドリ構想を具体化させた。資金調達と体制整備を経て1987年にTSMCが設立され、当初は苦戦したが、1990年代にファブレス企業が増えたことで需要が拡大し、成長が加速した。

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半導体製造に関するTSMCの主な取り組み

TSMCが世界の半導体製造をけん引してきた理由は、先端プロセスへの継続的な挑戦とグローバル生産体制の拡張にある。ここでは、その象徴的な取り組みを6つ紹介する。

業界初の7nmプロセス量産開始(2018年)

2018年、TSMCは7nm FinFETプロセスであるN7の量産を開始し、世界で初めて7nm世代を本格的に商用化したファウンドリーとなった

N7はモバイル向けSoCや高性能コンピューティング向け半導体を主用途に設計され、性能向上と消費電力低減を高い次元で両立するプロセスとして評価された。さらに2019年には改良版のN7+を量産化し、ファウンドリーとして初めてEUV露光を実製品に適用した点も大きな特徴である。

これらの技術はHPCや5G関連製品を中心に広く採用され、2020年代以降は民生機器や車載分野にも用途が拡大した。

5nmプロセス量産とiPhone向け需要の獲得(2020年)

2020年、TSMCは5nm FinFETであるN5を量産に移行し、スマートフォンや高性能コンピューティング向けの顧客製品を実製品レベルで支えた。N5はEUVリソグラフィを採用したTSMCのテクノロジーとしては2例目で、微細化による高密度化と、電力・性能の両立を狙ったプロセスである。

さらにTSMCは用途とコスト要件に応じて5nmファミリーを拡張し、改良版のN5Pや4nm世代のN4P・N4C、HPC向けに最適化したN4X、車載向けのN5Aなどを整備した。これらは量産段階で高い歩留まりを示し、先端ノード需要の受け皿として存在感を高めた。

3nmプロセスの量産開始(2022年)

2022年、同社は台湾・台南の生産拠点で3nm FinFET(N3)を量産に移行し、3nm世代を最初に本格量産したファウンドリーとなった。

N3は前世代から性能・消費電力・面積効率の総合的な改善を狙ったプロセスで、用途拡大に合わせて改良版のN3EやN3Pも展開している。さらにHPC向けのN3X、コスト効率を重視するN3C、車載向けのN3Aなどを用意し、要求仕様の異なる顧客に合わせて3nmファミリーを拡張している。

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熊本第1工場(JASM)の完成と量産開始(2024年)

2024年、TSMCが日本市場への本格的な進出の足がかりとしてJASM熊本第1工場を設立し、同年12月から量産を開始した。本工場では12ナノメートルから28ナノメートルのロジック半導体を製造し、主な顧客はソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車などである。

月産能力は12インチ換算で約5万5,000枚を想定し、画像センサーや車載半導体の安定供給を担う重要拠点となっている。量産開始後は高い歩留まりで安定稼働しており、政府支援を背景に地域経済や雇用創出にも大きく寄与している。

熊本第2工場の建設開始(2025年10月)

TSMCは熊本県菊陽町の運営子会社JASMを通じ、第2工場の建設を進めていることを、2025年10月16日の決算説明会で明らかにした。

しかし、その一方で第2工場は建設工事が停滞しているとも報じられており、従来想定していた6ナノから先端の4ナノへ切り替えや、AI向け需要の高まりを受け、生産品目をAI半導体向けへ切り替えることを検討していることが背景にあるともいわれている。

操業開始は2027年末を目指すが、計画通り量産開始できるか懸念する声もある。雇用は約1,700人を見込み、第1工場と合わせた総投資額は3兆円規模とされる。また、第2工場単体の総投資額は約1兆6,900億円が見込まれ、日本政府は最大7,320億円の補助を予定している。

2nm(N2)プロセス量産開始(2025年第4四半期)

TSMCは、計画通り2025年第4四半期に2nm(N2)プロセスの量産を開始した。N2テクノロジーの最大の特徴は、同社として初めてナノシートトランジスタを本格採用した点にある。

従来のFinFET構造に比べ、チャネルを水平方向に積層するナノシート構造は、電流制御性を大幅に高め、性能向上と消費電力削減を同時に実現できる。これによりN2は、フルノード世代として性能と電力効率の両面で飛躍的な進歩を達成した。

N2テクノロジーは、トランジスタ密度とエネルギー効率の双方で業界最高水準に位置付けられ、高性能計算や先端ロジックへの需要拡大に応える基盤となる。派生プロセスの展開も視野に入れた継続的な機能強化により、TSMCの先端プロセス分野での技術的優位性は今後も維持・拡大されていく見通しである。

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半導体業界におけるTSMCのシェア率と売上高

世界の半導体受託製造市場において、TSMCは圧倒的な存在感を示している。TrendForceの最新の調査では、2025年第3四半期のファウンドリ売上高に占めるTSMCのシェアは約71%にまで拡大し、事実上7割以上の市場を一手に担っている状況だ。

この高いシェアを背景に、TSMCの売上高も極めて大規模である。例えば2025年第3四半期の売上高は約330億ドルに達しており、主要顧客向けに先端プロセス製品の供給拡大が牽引している。シェアと売上高双方の規模により、TSMCはグローバルな半導体供給網の中心的存在として認識されている。

また、TSMCの財務実績については、四半期ごとに大きな収益を計上しており、強い販売基盤と需要に支えられて成長を続けている。例えば2025年内の月別データを見ると、年間を通じて堅調な売上伸長が確認されており、2025年全体の収益トレンドは前年同期比で大幅な増加を示している。

これらの数字は、TSMCが単なる受託生産企業を超えて、先進的なプロセス技術を持つ半導体製造の中核企業として世界市場を事実上支配していることを示している。

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TSMCの特徴や事業の強み

受託製造に特化した独自のビジネスモデルを軸に、巨額投資や技術力で業界を牽引してきたTSMCの強みについて、競争優位を支えるポイントを5つ紹介する。

受託製造のみに特化したビジネスモデル

TSMCの最大の特徴の一つが、半導体の設計や自社ブランド製品を一切持たず、受託製造のみに特化した純粋なファウンドリ企業である点だ。自社製品を展開しないことで、顧客と競合関係にならず、設計データや知的財産を厳格に守る中立的な立場を維持できる。

このビジネスモデルにより、AppleやNVIDIA、AMDなど、世界の有力ファブレス企業が安心して最先端チップの製造を委ねている。設計思想や用途が異なる多様な顧客の要望に応じて製造サービスを提供できることも強みであり、長期的な信頼関係の構築につながっている。

莫大な設備投資による競争優位性

次に、TSMCの事業を支える強みとして、他社を圧倒する規模で継続的に行われる設備投資である。最先端半導体の製造には、EUV露光装置や高度なクリーンルームなど、極めて高価な設備が不可欠であり、年間で数兆円規模の投資が求められる。

TSMCは市場需要を先読みし、世代交代に先行して設備を整える戦略を取ってきた結果、微細化競争で遅れを取ることなく生産体制を構築できている。この巨額投資は新規参入や追随を困難にする強力な参入障壁となり、競争優位性を一段と高めている。

さらに近年は地政学リスクを踏まえ、米国や日本にも製造拠点を分散させ、供給体制の強化を進めている点も特徴である。

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先端プロセスとパッケージング技術

また、先端プロセスと先端パッケージング技術の両方を高度化してきた点もTSMCの強みである。微細化が物理的限界に近づく中、単にトランジスタを小さくするだけでは性能向上が難しくなっている。

TSMCはこの課題に対し、微細プロセスの進化と並行して、複数チップを高密度に統合する先端パッケージング技術を磨いてきた。代表例が、複数のロジックやメモリを立体的・高密度に接続するCoWoSやInFOといった技術群である。

これにより、演算性能の向上や消費電力の低減、チップ設計の自由度拡大を実現している。特にAIや高性能コンピューティング分野では、先端プロセスと先端パッケージングを組み合わせた最適解を提供できる点が、TSMCを不可欠な存在へと押し上げている。

強固なオープンイノベーション体制

そして、強固なオープンイノベーションシステムもTSMCの競争力を支えている。TSMCは自社単独で技術を完結させるのではなく、設計会社、EDAベンダー、IPプロバイダー、装置・材料メーカーなどと連携し、開発初期段階から製造までを見据えた協調体制を築いてきた。

代表的な取り組みとして、設計資産や検証環境を体系的に提供するプラットフォームを整備し、顧客が短期間で高品質な半導体を設計できる環境を構築している。これにより、設計と製造のすり合わせが円滑に進み、技術リスクや開発期間を抑制できる。

多様なパートナーを巻き込んだこの仕組みは、半導体開発の複雑化が進む中で、TSMCを中核とした産業エコシステムを形成している。

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高い歩留まりと製造信頼性

最後に、高い歩留まりと信頼性がある。先端プロセスでは微細化に伴い製造難易度が急激に高まるが、TSMCは量産初期から安定した歩留まりを確保する能力に優れる。これは長年にわたり蓄積してきた製造データの活用や、工程管理の高度化、品質評価体制の徹底によるものだ。

高い歩留まりは製造コストの低減と供給安定性の両立につながり、顧客は量産立ち上げ時のリスクを抑えられる。また、車載や産業用途など高信頼性が求められる分野でも厳格な品質基準に対応しており、長期供給を前提とした信頼できる製造パートナーとして評価されている。

TSMCの今後の見通しと展望

TSMCは今後も先端半導体分野の中核企業として成長を続けるだろう。AIや高性能計算向け需要の拡大を背景に、微細化技術と量産力を軸とした競争優位は当面揺らぎにくい。加えて、地政学リスクを意識した製造拠点の分散により、供給網の安定性も高まりつつある。

一方で、技術開発の難易度や投資負担は一段と増すが、それを乗り越えられる体制を持つ点が強みであり、世界の半導体産業を牽引する存在であり続けるだろう。

2026年半導体市場予測

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