かつて世界の半導体市場を席巻した国内メーカーは、現在では存在感が薄れたと語られることが多い。しかし実際には、製造装置や材料、パワー半導体、イメージセンサーなど、世界シェアを握る分野も数多く残っている。
産業構造の変化や国際競争の激化を背景に、どのような経緯で競争力が揺らぎ、どの領域で強みを維持してきたのかを正確に把握することは、今後の投資判断や事業戦略を考えるうえで欠かせない。
本記事では、戦後から現在に至るまでの歩みを整理し、主要企業の役割や得意分野を具体的に解説する。
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目次
半導体市場における日本の現状と世界シェア
日本の半導体産業は、完成した半導体チップそのものの世界シェアではかつての勢いを失っているものの、製造装置や材料といった上流分野では依然として高い競争力を維持している構造である。
半導体材料分野では世界シェア約48%と首位に位置し、フォトレジストでは9割以上、シリコンウエハーでも約5割を占めるなど、代替が難しい基盤材料で強みを持つ。また製造装置分野でも約31%の世界シェアで米国に次ぐ2位となっており、特定工程では日本企業が世界トップを占めている。
一方で、半導体デバイスそのものの世界シェアは1割未満にとどまるが、パワー半導体では約27%、イメージセンサーでは約5割といった特定領域では高い存在感を保っている。
一般社団法人日本半導体製造装置協会が発表した「半導体・FPD製造装置 需要予測(2025 年度~2027 年度) 」では、半導体製造装置の日本製装置販売額が2026年度に前年度比12%増の5兆5004億円に達する見通しであり、AI関連投資の拡大を背景に装置分野の成長が期待されている。
また、企業別でみると、2025年第3四半期の世界売上ランキングでソニー、キオクシア、ルネサスが上位20社に入るなど、特定分野に強みを持つ企業が存在する。総じて、日本はチップ製造そのものよりも、材料や装置といった基盤技術で世界を支える構造に移行しているのが現状だ。
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日本における半導体産業の歴史
日本の半導体産業が誕生から世界トップへ躍進し、その後に競争力を失っていくまでの流れを、代表的な4つの転換点から紹介する。
ソニーが日本初のトランジスタラジオを発売(1950年代)
1950年代、日本の半導体産業の出発点となった象徴的な出来事が、ソニーによるトランジスタラジオの実用化である。1955年、当時の東京通信工業(現ソニー)は、日本初のトランジスタラジオ「TR-55」を発売した。
これは真空管を使った従来のラジオに比べて小型・軽量で、電池で長時間駆動できる点が特徴であり、携帯可能な電子機器という新しい市場を切り開いた製品であった。その後、1957年にはポケットに入るサイズの「TR-63」を米国市場向けに投入し、世界的なヒット商品となったことで、日本製電子機器の品質と技術力が国際的に認知される契機となった。
この成功により、日本企業はトランジスタの量産技術や回路設計技術を急速に蓄積し、電子部品産業の基盤を確立していった。こうした動きは、後の半導体産業の発展につながる重要な第一歩であり、日本がエレクトロニクス分野で存在感を高める出発点となる。
日本が民生用トランジスタで世界をリード(1960年代)
1960年代に入ると、日本の電子産業は急速な拡大期を迎え、トランジスタの生産量で世界をリードする存在となった。家電や通信機器、自動車電装品などで半導体の需要が急増し、国内メーカーは量産体制の整備と製造技術の高度化を進めた。
当時のNECや日立製作所、東芝、三菱電機などの電機メーカーは、自社製品に組み込む半導体を内製化する垂直統合型のビジネスモデルを採用し、設計から製造までを一貫して行うことで品質と供給の安定性を確保した。
この体制により、大量生産によるコスト低減と性能向上が同時に進み、海外市場でも競争力を高めていった。さらに、日本企業は品質管理や工程改善の手法を積極的に取り入れ、歩留まりの向上と信頼性の確保に注力。
その結果、1960年代後半には日本のトランジスタ生産量は世界最大規模に達し、半導体産業の国際的な地位を確立するに至った。この時期に築かれた量産技術と品質管理のノウハウは、その後の集積回路時代の躍進を支える基盤となったといえる。
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DRAMメモリなどの日本企業が世界シェアを50%以上獲得(1980年代)
そして、1980年代に入ると、日本の半導体メーカーはDRAMを中心としたメモリ分野で世界市場を席巻するようになった。当時、日本の総合電機メーカーは、大規模な設備投資と徹底した品質管理により高い歩留まりを実現し、低コストかつ高信頼性の製品を大量に供給した。
中でも、64Kビット、256Kビット、1Mビットといった世代のDRAMで日本企業は次々と量産化を成功させ、技術力と生産力の両面で優位性を確立した。その結果、1980年代後半には世界のDRAM市場における日本企業のシェアは50%を大きく超え、半導体全体の売上高でも日本勢が上位を占める状況となった。
この時期、日本は半導体大国として国際競争の中心に立ち、電子産業全体の競争力を支える基盤を形成したのである。
日米協定やビジネスモデルの分離、転換への遅れによる衰退(1990年代)
しかし、1990年代に入ると、日本の半導体産業は急速に競争力を失っていった。その転換点となったのが、1986年に締結された日米半導体協定である。
この協定では、日本市場における外国製半導体のシェア拡大や、ダンピングとみなされる価格設定の是正などが求められ、日本企業は価格競争力を発揮しにくい状況に置かれた。加えて、1990年代以降はパソコンや通信機器向けの半導体需要が急拡大し、設計に特化したファブレス企業と、製造に特化したファウンドリ企業が台頭するなど、ビジネスモデルの分業化が進んだ。
一方で、日本の多くの電機メーカーは設計から製造、製品組み込みまでを自社で行う垂直統合型の体制を維持しており、市場構造の変化に迅速に対応できなかった。さらに、設備投資の判断が遅れたことや、企業ごとに開発資源が分散したことも競争力低下の要因となった。
その結果、韓国や台湾、米国の企業が台頭し、日本の半導体シェアは急速に縮小していったのである。
日本の半導体業界が衰退した理由
ここでは、日本の半導体業界が衰退した要因を解説する。日本の半導体業界が競争力を失った背景には、政治的要因から市場構造の変化、経営判断の遅れまで複合的に要素が関係している。
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日米協定による政治的圧力
1つ目の日米協定による政治的圧力は、1980年代に日本製DRAMの台頭で米国側が不公正競争を問題視し、外交交渉を通じて日本企業の価格設定や販売行動に強い制約をかけたことを指す。1986年の協定では、ダンピング防止の名目で日本企業の輸出価格を監視し、一定水準を下回ると是正を求める枠組みが導入された。
さらに日本市場で外国製半導体の販売機会を確保する方針が示され、米国政府は達成状況を継続的に注視した。実際には、協定の運用が日本企業の価格競争力を削ぎ、取引先との柔軟な値付けや迅速な販促を難しくした側面がある。
加えて、米国は制裁関税などの措置を示唆しながら交渉を優位に進めたため、日本企業は政治リスクを織り込んだ守りの対応を迫られた。結果として、競争の舞台が技術や生産性だけでなく、国際政治の力学に左右される構図となり、日本勢の成長にブレーキがかかったといえる。
市場の構造変化への乗り遅れ
2つ目の市場の構造変化への乗り遅れは、半導体産業の主戦場がメモリ中心の時代から、パソコンや通信機器、スマートフォン向けのロジック半導体へと移行していく中で、日本企業がその変化に十分対応できなかったことを指す。
1980年代まで日本企業はDRAMなどのメモリ分野で高い品質と生産技術を武器に世界市場を席巻していたが、1990年代以降はパソコンやインターネットの普及に伴い、CPUや通信用チップなど設計力を重視する製品の需要が急増した。
加えて、米国では設計に特化したファブレス企業と、製造を専門とするファウンドリ企業が台頭し、分業型の産業構造が形成されたのに対し、日本企業は従来のメモリ中心の事業構成から抜け出せず、新しい需要分野への対応が遅れた。
その結果、成長市場での存在感を十分に発揮できず、世界市場におけるシェア低下を招く一因となったのだ。
ビジネスモデルの転換の失敗
3つ目のビジネスモデルの転換の失敗は、半導体の設計と製造、製品化がそれぞれ高度化・巨額化する中で、収益を生む事業構造へ組み替えられなかったことを指す。半導体は微細化が進むほど製造装置や工場投資が膨張し、先端プロセスでは単独企業での負担が極めて重くなる。
にもかかわらず、日本の多くの企業は設計から製造までを自社で抱える体制を維持し続け、投資規模と回収のバランスを取りにくくなった。さらに、同種の製品を各社が並行して開発し、量産能力や研究開発が分散したことも不利に働いた。
結果として、必要なタイミングで大胆に投資して規模の経済を作る、あるいは得意領域に集中して外部の製造・設計能力と組み合わせるといった再編が遅れ、競争力の源泉が薄まった。加えて、事業部門間の利害調整が複雑で、意思決定が遅くなりやすい企業構造も、機敏な戦略転換を阻んだ。
技術力があっても、投資回収の見通しと組織の動かし方が伴わなければ勝てないという現実に直面し、収益力の低下につながったといえる。
税制と公的支援格差
4つ目の税制と公的支援格差は、各国政府による補助金や税制優遇の差が、企業の投資競争力に大きな影響を与えたという問題である。半導体産業は巨額の設備投資を必要とし、最先端の工場では数兆円規模の資金が必要になる。
このため、米国や韓国、台湾、中国などでは、補助金の支給や法人税の減免、設備投資減税といった強力な支援策が導入され、企業が先端工場を建設しやすい環境が整えられてきた。一方で、日本は長らくこうした直接的な支援が限定的で、企業は自社資金に依存した投資を強いられる状況にあった。
その結果、設備投資の意思決定が慎重になり、最先端プロセスへの参入や生産能力の拡大で海外勢に後れを取る場面が増えた。さらに、税負担や電力コストなどの事業環境面でも競争国との差が存在し、国内での大規模投資を躊躇する要因となった。
半導体は国家戦略産業として位置付けられることが多く、政府の支援水準がそのまま企業の競争力に直結する。こうした政策面での差が積み重なった結果、日本企業の投資余力と市場シェアを低下させることになったのだ。
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半導体産業で今も日本が強い分野
日本の半導体産業が衰退しているとはいいつつも、日本が依然として高い競争力を保つ分野がいくつか存在している。以下では、世界市場で高いシェアを持つ4つの領域に焦点を当て紹介する。
半導体材料
1つ目は、半導体材料で、日本企業が現在も世界トップクラスのシェアを維持している重要分野である。
半導体の性能や歩留まりは、ウエハーや化学材料の品質に大きく左右されるため、素材の精度と安定供給は産業全体の基盤となる。日本は半導体材料全体で世界シェアの約半分を占めるとされ、特にフォトレジストでは9割以上、シリコンウエハーでも約5割という高い占有率を誇る。
信越化学工業やJSR、東京応化工業、SUMCOなどの企業が、最先端の微細加工に対応する高純度材料を供給している。これらの素材は不純物の混入や微細な欠陥が性能低下に直結するため、極めて高度な精製技術と品質管理が求められる。
長年にわたり蓄積された化学技術や製造ノウハウが参入障壁となり、日本企業の優位性を支えている。先端プロセスの進展に伴い、より高性能な材料への需要が高まっているため、日本の素材メーカーは世界の半導体生産を支える不可欠な存在といっても過言ではない。
半導体製造装置
2つ目は、半導体製造装置で、日本企業が現在も世界的な競争力を維持している代表的な分野だ。
半導体は数百にも及ぶ精密な工程を経て製造されるが、その各工程で用いられる装置の多くを日本企業が供給している。例えば、東京エレクトロンは成膜やエッチング装置で世界上位のシェアを持ち、SCREENホールディングスは洗浄装置で世界トップクラスの実績を誇る。
また、アドバンテストは半導体試験装置で世界首位級のシェアを有しており、微細化が進むほど同社の装置の重要性は高まっている。こうした装置はナノメートル単位の精度や高い信頼性が求められ、長年の技術蓄積と精密加工技術が必要となるため、新規参入が難しい分野でもある。
その結果、日本企業は特定工程で世界シェアの上位を占め、半導体産業全体を支える不可欠な存在となっている。半導体需要が拡大する中で、製造装置への投資も増加しており、日本の装置メーカーは今後も世界市場で重要な役割を担い続けると見込まれる。
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パワー半導体
3つ目は、電力を効率よく制御・変換する役割を担うパワー半導体の分野である。主に電気自動車、鉄道、産業機械、家電、再生可能エネルギー設備など、大電力を扱う機器に不可欠な部品であり、省エネルギー化や高効率化を支える基盤技術となっている。
日本企業は早くからこの分野に注力しており、三菱電機、富士電機、ローム、ルネサスエレクトロニクスなどが世界市場で存在感を示している。特にIGBTやSiC(炭化ケイ素)といった次世代デバイスの開発に強みを持ち、高温環境でも高効率で動作する製品を実用化している点が特徴である。
日本はパワー半導体分野で世界シェアの約3割前後を占めるとされ、自動車向けや産業用途を中心に安定した需要を獲得。電動化の進展や再生可能エネルギーの拡大に伴い、電力制御の重要性は高まっているため、日本企業の役割は今後も大きいといえるだろう。
イメージセンサー
4つ目は、光を電気信号に変換して映像や画像として出力する半導体であり、スマートフォンやデジタルカメラ、自動車の運転支援システム、監視カメラなどに不可欠な部品のイメージセンサー分野だ。
この分野では日本企業が世界的に高い競争力を持ち、特にソニーグループはCMOSイメージセンサーで世界シェアの約5割前後を占める最大手として知られている。高感度・低ノイズ・高速読み出しといった性能面で優位性を確立しており、ハイエンドスマートフォン向けセンサーでは事実上の標準的存在となっている。
また、自動車の自動運転や先進運転支援システムの普及に伴い、暗所でも鮮明に撮影できる高感度センサーや、複数の機能を一体化した積層型センサーの需要も拡大している。こうした分野では、長年の製造技術と高精度な品質管理を背景に、日本企業が開発力と信頼性の両面で評価を得ており、今後も重要な成長領域として位置づけられる。
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日本における半導体関連の主要企業・メーカー
最後に、半導体の設計・製造から装置、材料、後工程まで幅広い分野で存在感を示す、日本を代表する主要企業を20社紹介する。
ソニーセミコンダクタソリューションズ
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社は、ソニーグループの半導体事業を担う中核企業であり、主にイメージングおよびセンシング分野の半導体デバイスを開発・製造・販売している。
研究開発から設計、製造、販売までを一体化した体制を構築し、特にCMOSイメージセンサーでは売上金額ベースで世界シェア1位を占める。製品はスマートフォンやデジタルカメラ向けだけでなく、産業機器、車載用途、セキュリティ用途など幅広い分野に供給されている。
高感度・低ノイズを実現する裏面照射型や、回路を積層して小型化と高速化を両立した積層型CMOSイメージセンサーを開発しており、距離測定用のTime of FlightセンサーやエッジAIセンシング関連デバイスなども展開している。
ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクス株式会社は、東京都に本社を置く日本のグローバル半導体メーカーである。同社は、2003年に日立製作所と三菱電機の半導体部門を統合して設立されたルネサステクノロジと、NECから分社化したNECエレクトロニクスが2010年に経営統合することで発足した。
主力は電子機器を制御するマイクロコントローラで、車載・産業・インフラ・IoT向けに、SoCやアナログ半導体、パワー半導体を組み合わせた組み込みソリューションを提供する。2025年12月期通期の業績は売上高1兆3212億円を記録したが、自動車向けの販売減や提携先の経営破綻に伴う損失計上により、最終損益は517億円の赤字となった。
キオクシア
キオクシア株式会社は、NAND型フラッシュメモリの開発・製造を主力とする日本の半導体メモリ専業メーカーである。2017年に東芝のメモリ事業を承継した東芝メモリを前身とし、2019年に現社名へ変更、2024年12月には東京証券取引所プライム市場に上場した。
主な事業は「BiCS FLASH」ブランドの3DフラッシュメモリやSSDなどの開発・製造・販売であり、フラッシュメモリ市場では世界トップクラスのシェアを持つ。生産拠点として三重県四日市市と岩手県北上市に大規模工場を構え、AIデータセンター、スマートフォン、車載機器、産業機器向けに高性能メモリを供給している。
2026年からはAIデータセンターの需要に応える次世代の3Dフラッシュメモリの量産を開始する計画や、AI処理の高速化を実現する超高性能SSDの開発も進めている。
ローム
ローム株式会社は、京都府京都市に本社を置く半導体・電子部品メーカーである。1958年に抵抗器メーカーとして創業し、現在はパワー半導体やアナログIC、ディスクリート部品を中核に、自動車・産業機器・民生機器など幅広い市場へデバイスを供給している。
開発から製造、販売までを自社で担う垂直統合型(IDM)の体制をとり、品質管理と安定供給を競争力の土台にしている。パワーデバイスでは、車載インバーターやオンボードチャージャー、産業用電源の高効率化に直結するSiCパワーデバイスの開発・量産投資を進め、関連するウエハ生産も含めた供給力強化に取り組む。
また、東芝とは、パワー半導体の国内供給を拡大する製造連携・投資計画で協業しており、日本の供給網の強靱化を図っている。
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三菱電機
三菱電機株式会社は、重電、産業メカトロニクス、情報通信、家庭電器など幅広い事業を展開する日本の総合電機メーカーであり、半導体分野ではパワーデバイスを中心に事業を展開している。
電力の変換や制御を担うパワー半導体を主力とし、鉄道車両、風力発電、産業用モーター、電気自動車、家電製品など多様な用途に向けて製品を供給している。特に複数のパワーチップと制御回路を一体化したインテリジェントパワーモジュール(IPM)の分野では、世界トップクラスのシェアを有する。
また、次世代パワー半導体として期待されるSiCデバイスの開発と量産にも注力し、電力損失の低減や機器の小型化に貢献している。熊本県では300mmウエハに対応した新工場の建設を進めるなど、生産体制の強化も図っている。さらに光ファイバー通信用デバイスや高周波デバイスも手がけ、通信インフラや宇宙・防衛分野の高度化を支えている。
富士電機
富士電機株式会社は、パワーエレクトロニクス技術を中核に、エネルギー・環境分野の製品とサービスを展開する総合電機メーカーである。半導体領域では、電力の変換・制御を担うパワー半導体を主力とし、車載向けでは直接水冷パッケージ技術やRC-IGBTなどの技術を用いたパワーモジュールを提供している。
産業分野でも再生可能エネルギー設備や鉄道、各種電源装置向けに大容量IGBTを供給し、同社の主要製品シェアとしてIGBTモジュールは世界3位(2023年度実績、同社調べ)とされる。次世代としてはSiC技術も掲げ、電動化・省エネ需要に向けた高効率デバイスの開発を進めている。
Rapidus
Rapidus株式会社は、次世代半導体の国内製造を目的に2022年8月に設立された半導体メーカーである。設立後、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が累計で1兆円規模の出資をしている。
事業は最先端ロジックの量産技術確立に置かれ、IBMやimecとの連携を進めている。同社は、北海道千歳市で製造拠点IIMの整備を進め、2025年4月に試作ラインを稼働し、2027年の量産開始を目標としている。
また、経済産業省の枠組みでは委託研究予算の上限が1兆7,225億円と整理されており、研究開発と製造基盤の構築を同時に加速させる体制を取っている。
東京エレクトロン
東京エレクトロン株式会社は、東京都港区に本社を置く、日本最大かつ世界トップクラスの半導体製造装置メーカーである。同社は世界的な半導体製造装置市場において第4位前後の売上規模を誇り、日本の半導体産業を支える中核企業として確固たる地位を築いている。
事業の核となるのは、半導体製造の基幹となる感光剤を塗布・現像するコータ・デベロッパー、不要な膜を削り取るエッチング装置、回路の素材となる膜を形成する成膜装置、および基板の不純物を取り除く洗浄装置の4つの工程における装置展開である。
特にコータ・デベロッパー市場では世界シェア約90%という圧倒的な地位を有しており、次世代の極端紫外線(EUV)露光技術に対応した最新装置の開発も進めている。また、電気的検査を行うウェハプローバなどの検査装置も手がけている。
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アドバンテスト
株式会社アドバンテストは、東京都千代田区に本社を置く、半導体検査装置(テスタ)の世界最大手メーカーである。同社は半導体の製造工程において、その性能や信頼性を確認する「後工程」の検査ソリューションをグローバルに展開しており、特に非メモリー(ロジック)向けおよびメモリー向けの両分野で極めて高い競争力を有している。
主な事業内容は、スマートフォンやパソコンの演算を担うSoC(システム・オン・チップ)向けのテスタや、AIデータセンターで需要が急増しているHBM(高帯域幅メモリー)を含むメモリー向けテスタを主力としている。
また、これに加え、テスト装置と連動して半導体チップを搬送・温度制御するハンドラや、ウェハ上のチップに接触して電気信号を伝えるプローブカードといった周辺機器、さらにはナノテクノロジーを利用した電子ビーム計測装置も手がけている。
ディスコ
株式会社ディスコは、東京都大田区に本社を置く、半導体製造の後工程における「切る」「削る」「磨く」技術に特化した世界最大手の精密加工装置メーカーである。
1937年に砥石メーカーとして創業して以来、高度な微細加工技術を追求し続け、現在ではダイシングソー(切断装置)、グラインダ(研削装置)、ポリッシャ(研磨装置)の各市場において世界シェアの約7割から8割を占める圧倒的な地位を築いている。
近年では、生成AIの普及に伴うHBM(高帯域幅メモリー)の需要拡大や、電気自動車(EV)向けのSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の普及が事業の強い追い風となっている。特に硬く脆い性質を持つSiCウェハの加工や、チップを積層するためにウェハを薄化する高度な技術において、同社の製品は不可欠な存在だ。
SCREENホールディングス
株式会社SCREENホールディングスは、京都府京都市に本社を置く、半導体製造装置、成膜装置、印刷機器などを展開する大手精密機器メーカーである。主要な事業内容は、半導体製造の前工程においてウェハ上の汚れや不純物を取り除く「洗浄装置」の開発、製造、販売、および保守サービスである。
同社は世界の半導体洗浄装置市場において約40%超という極めて高いシェアを有しており、特にウェハを1枚ずつ処理する「枚葉式洗浄装置」においては世界トップシェアを誇る。そのほか、多数のウェハを一括で処理する「バッチ式洗浄装置」や、裏面洗浄装置など、顧客のニーズに合わせた多様なラインアップを揃えている。
また、熱処理装置(ランプアニール装置)や、ウェハ上の回路パターンを検査する外観検査装置なども手がけており、微細化が進む最先端半導体の歩留まり向上に寄与している。
レーザーテック
レーザーテック株式会社は、半導体関連の検査・測定装置を主力とする精密機器メーカーである。同社は自社工場を持たないファブレス経営の形態をとり、研究開発に特化することで高い収益性を維持しているのが特徴だ。
事業の核には、半導体製造プロセスにおけるフォトマスクやウェハの欠陥検査装置の開発、製造、販売である。特に次世代の微細化技術であるEUV(極端紫外線)露光を用いた製造工程において、EUVマスクブランクス検査装置では事実上の世界市場独占状態にある。
また、ペリクル(防塵カバー)を装着した状態でのEUVマスク欠陥検査装置においても世界シェア100%を誇る。
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信越化学工業
信越化学工業株式会社は、日本を代表する総合化学メーカーである。同社は「塩ビ・化成品」「半導体シリコン」「シリコーン」「電子・機能材料」「機能性化学品」などの事業を展開している。特に塩化ビニル樹脂と半導体シリコンウエハーにおいて世界シェア第1位を誇り、海外売上比率が約8割に達するグローバル企業としての地位を確立している。
同社の主力製品である300mmシリコンウエハーは、AI(人工知能)向け需要が牽引しており、市場で約30%の推定シェアを持つ。また、回路形成に用いるフォトレジストでも世界シェアの約25%を占める最大手であり、特に次世代技術であるEUV(極端紫外線)露光用レジストでは世界2位のシェアを維持している。
SUMCO
株式会社SUMCOは、半導体用シリコンウェーハの製造・販売を専業とする世界大手のメーカーである。同社は半導体の基板となるシリコンウェーハに経営資源を集中させることで、高度な結晶成長技術と精密な加工技術を維持している。
事業は、高純度単結晶シリコンの引き上げから、スライス、研磨、洗浄、検査に至る一連の製造工程を網羅しており、製品としては最先端のロジックICやメモリに用いられる300mmウェーハを中心に、自動車や産業機器向けの200mmおよび150mm以下のウェーハまで幅広く展開している。
JSR
JSR株式会社は、半導体材料やライフサイエンス、合成樹脂などを手掛ける大手化学メーカーである。1957年に合成ゴムの国産化を目的に「日本合成ゴム株式会社」として設立されたが、現在は石油化学事業を売却し、収益性の高いデジタルソリューション事業とライフサイエンス事業を経営の柱としている。
半導体関連においては、回路形成の露光工程で使用される感光材であるフォトレジストの世界最大手の一社として知られ、中でも最先端の微細化技術であるEUV(極端紫外線)露光用レジストにおいて世界トップクラスのシェアを誇る。
また、配線の平坦化に不可欠なCMP(化学機械研磨)スラリーや、洗浄液、実装工程で使用される感光性絶縁材料など、前工程から後工程に至るまで多岐にわたる高機能材料を供給している。
東京応化工業
東京応化工業株式会社は、半導体や液晶パネル製造に不可欠な高機能化学薬品を手掛ける大手化学メーカーである。同社は世界中に製造・販売拠点を持ち、特に半導体製造プロセスの露光工程で使用される感光材「フォトレジスト」において、世界シェア1位を誇るグローバル企業である。
半導体の前工程においては、g線・i線用から、ArF(フッ化アルゴン)、さらには最先端のEUV(極端紫外線)露光用まで、あらゆる世代のフォトレジストをラインナップしており、EUV用レジストでは約28%、KrF用では約32.4%の世界シェアを占めている。
また、後工程においては、半導体の高密度実装や3Dパッケージングに対応した層間絶縁膜や感光性材料を提供し、AI半導体などの高性能化を支えている。
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富士フイルム
富士フイルムホールディングス株式会社は、かつて写真フィルムで培った高度な化学合成技術やナノ分散技術を基盤に、現在はヘルスケアや電子材料を中心とする高機能材料事業を経営する企業である。
同社は積極的なM&Aを通じて事業領域を拡大しており、半導体材料分野においても、旧日立化成の研磨材事業や米インテグリス社の電子材料事業を買収することで、世界トップクラスの製品ラインナップを有する総合サプライヤーとしての地位を確立した。
半導体関連事業では、製造工程のほぼ全てを網羅する広範な材料群を供給しており、特に最先端のEUV(極端紫外線)露光用レジストや、ArF(フッ化アルゴン)用レジストに注力している。
また、配線の平坦化を行うCMP(化学的機械研磨)工程で使われるCMPスラリーでは高い世界シェアを誇り、高純度洗浄液やイメージセンサー向けのカラーフィルター材料でも業界をリードしている。
レゾナック
株式会社レゾナック・ホールディングスは、大手化学メーカーで、2023年1月に昭和電工と旧日立化成(昭和電工マテリアルズ)が統合して誕生した。同社は、半導体材料の広範なポートフォリオを持つ世界トップクラスのサプライヤーとなっている。特に「後工程」と呼ばれるパッケージング分野で圧倒的な存在感を示している。
回路の平坦化に用いるCMPスラリーや、チップを基板に固定するダイボンドフィルム、基板材料である銅張積層板、感光性フィルム、封止材など、主要なパッケージ材料において世界シェア1位の製品を複数有している。
また、生成AIの普及に伴い需要が急増している「HBM(高帯域幅メモリ)」や「チップレット」といった次世代の3次元実装技術に不可欠な、高性能な非導電性フィルム(NCF)や放熱材料の開発・供給にも注力している。
イビデン
イビデン株式会社は、岐阜県大垣市に本社を置く電子およびセラミック事業を主軸とするメーカーである。同社はプリント配線板やICパッケージ基板などの電子部品から、自動車向け排ガス浄化装置などのセラミック製品まで幅広い事業を展開している。
半導体関連事業においては、ICパッケージ基板の製造・販売を主力としており、特に先端AIサーバー向けICパッケージ基板では、世界シェアの8割から9割を有するとみられるグローバルトップメーカーである。
同社の製品は、配線幅がナノメートル単位のICチップとマイクロメートル単位のマザーボードを橋渡しする高度な積層技術や、自由な回路設計を可能にする独自の構造を備えている。
新光電気工業
新光電気工業株式会社は、長野県長野市に本社を置く半導体パッケージの総合メーカーである。同社は富士通グループの中核を担っていたが、事業構造改革に伴い、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)が主導する連合への売却が決定。現在は、大日本印刷や三井化学が参画する体制のもと、次世代の半導体実装技術における事業強化を進めている。
半導体チップを保護し外部基板と電気的に接続する半導体パッケージの製造を軸に、高性能な演算処理が必要なサーバーやPC、AI分野で不可欠な「フリップチップタイプパッケージ用基板」において世界的に高いシェアを誇り、市場シェアは世界第2位に位置している。
また、スマートフォンやIoT機器向けの「プラスチックBGA基板」、自動車のパワーICに使用される「高放熱性リードフレーム」など、用途に応じた多様な製品群を展開。他にも、半導体製造装置の内部でウェハーを保持する「セラミック静電チャック」などの高付加価値な周辺部品も手掛けている。
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日本の半導体産業を復活させるために
日本の半導体産業を復活させるには、装置や材料といった強みを持つ上流分野だけでなく、設計、量産、後工程、最終製品への実装までを一体化した産業基盤の再構築が不可欠だといえる。
先端ロジックやメモリ分野では、官民による継続的な大型投資と量産技術の確立が求められると同時に、プロセスからソフトまで横断的に扱える人材の育成を進め、技術基盤を厚くすることが必要だ。他にも、サプライチェーンの耐性を高め、車載や電力分野など国内需要を軸に量産実績を積み上げることが、競争力回復の鍵となるだろう。