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2026.01.15 #研究開発

研究開発におけるマネジメントとは?求められる背景や役割、円滑に進めるポイントの解説

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技術革新とグローバル競争の進展により、優れた品質の製品が短期間で市場に溢れる時代となった。この環境下で企業が持続的に成長するためには、単なる技術開発にとどまらず、研究成果を価値ある事業へと結び付ける仕組みが不可欠である。

しかし実際には、テーマの迷走や意思決定の遅れ、事業化に至らない研究に課題を感じている現場も多い。本記事では、研究開発を成果につなげるために重要となるマネジメントの考え方に焦点を当て、その必要性が高まる背景や担うべき役割、実務で押さえるべきポイントを解説する。

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研究開発におけるマネジメントとは?

研究開発におけるマネジメントとは、研究活動そのものを統制することではなく、研究成果を事業価値へと転換するために、人・テーマ・資源・時間を総合的に設計し、意思決定を行う取り組みである。

研究開発は不確実性が高く、成果がすぐに見えにくいという特性を持つため、進捗管理や予算管理だけでは十分とは言えない。中長期の事業戦略や企業ビジョンと研究テーマを結び付け、投資すべきテーマの選別や継続・中止の判断を適切なタイミングで行うことが重要となる。

また、研究者の専門性を生かしながら部門間連携を促進し、知見を組織資産として蓄積する役割も担う。研究開発マネジメントは、技術の成功確率を高めると同時に、限られた経営資源を最大限に活用するための経営と研究をつなぐ要といえる。

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なぜ研究開発マネジメントが求められるのか

研究開発マネジメントが求められる背景には、研究開発投資の拡大と事業環境の厳格化がある。日本の研究開発費は年々増加傾向にあり、企業成長やイノベーションの起点として研究開発部門への期待は高まっている一方、成果を事業価値へ結び付ける難易度は上がっている。

製品化までの道のりは長く、市場投入後も品質、コスト、納期、競合対応など継続的な判断が必要である。さらに、技術の成熟度や協業の可否、ニーズ適合性、投入タイミングといった要素は時間とともに変化し、後半での中断や中止も少なくない。

こうした不確実性の中で、技術、リソース、市場、競争環境のバランスを取りながら意思決定を行い、投資効率を高めるために、研究開発マネジメントの重要性は従来以上に高まっている。

研究開発マネジメントがうまくいかない典型的な課題

研究開発マネジメントがうまくいかない背景には、意思決定や評価の構造に起因する共通の落とし穴がある。ここでは、よくある課題を5つ紹介する。

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千三つ(せんみつ)の罠と出口戦略の欠如

1つ目は、出口戦略の欠如である。千三つとは、「1000のアイデアのうち成功するのは3つ」と例えられるように、研究開発の初期段階で生まれる多数のアイデアや試作のうち、実際に事業として成立するものはごく一部に限られるという現実を表した表現だ。

この千三つの罠とは、技術的に面白い結果が出た時点で成功と錯覚し、誰のどんな課題をどの価値で解くのか、収益化までの道筋は何かといった出口戦略を詰めないまま開発を前進させてしまうという罠である。

もし、顧客や価値、課題などを詰めずに進めてしまうと、後工程における量産条件、品質保証、調達、規制対応、販売チャネルなど事業側の要件が噴出し、追加コストと手戻りが膨らむことになる。

辞め時が判断できない(サンクコストの呪縛)

2つ目は、辞め時が判断できない、いわゆるサンクコストに起因する。サンクコストとは、すでに投下され回収不能となった時間、費用、人員などの投資であり、本来は将来の意思決定から切り離して考えるべきものである。

しかし研究開発では、長期間にわたり努力を重ねてきた経緯や関係者の思い入れが強く、これまでの投資を無駄にしたくない心理が働きやすい。その結果、技術的な優位性が薄れたり、市場環境が変化したりしても、合理的な中止判断ができず、成果が見込めないテーマを惰性で継続してしまう。

こうした状態は、限られた研究開発リソースを固定化し、本来注力すべき新規テーマへの投資機会を奪うことにつながる。

短期収益への偏重

3つ目は、短期収益への偏重がある。業績評価や株主対応を重視するあまり、早期に売上や利益が見込めるテーマばかりが優先されると、研究開発は改良型や延長線上の取り組みに偏りやすくなる。

その結果、本来は時間をかけて育成すべき基盤技術や将来の成長を支える挑戦的な研究が後回しにされ、長期的な競争力が低下する。研究開発は不確実性が高く、成果が出るまでに一定の時間を要する活動であるにもかかわらず、短期的な数値成果のみで評価されると、現場はリスクを避ける行動を取りやすくなってしまうものだ。

短期と長期の視点を両立させた評価軸を持つことが、健全な研究開発マネジメントには不可欠だといえる。

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属人化とブラックボックス化

4つ目は、属人化とブラックボックス化だ。特定の研究者や技術者の経験や勘に依存してプロジェクトが進むと、技術内容や判断根拠が組織内で共有されにくくなる。その結果、進捗状況や課題が可視化されず、マネジメント層が適切な意思決定を行えない状態に陥りやすい。

また、担当者の異動や退職が発生した場合、ノウハウが引き継がれず、研究が停滞したり最悪の場合は中断に追い込まれたりするリスクも高まる。さらに、ブラックボックス化した研究は他部門との連携を阻害し、事業部門や経営層との認識の乖離も生みやすい。なお、属人化を放置すれば、研究開発全体の再現性と持続性が損なわれるだろう。

オープンイノベーションの形式化

最後は、オープンイノベーションが形式化してしまう状態である。オープンイノベーションの形式化とは、外部連携を行っている事実そのものが目的化し、実質的な成果につながらない状態を指す。

大学やスタートアップとの共同研究、コンソーシアム参加などが増える一方で、なぜ連携するのか、何を得て自社の研究開発や事業にどう結び付けるのかという設計が不十分なまま進むケースは少なくない。

その結果、情報交換や実証実験にとどまり、研究テーマの深化や競争優位の確立に結び付かない。さらに、連携先任せになり自社内での理解や活用が進まない場合、知見が組織に蓄積されず、活動が単発で終わってしまうことも少なくない。形式的な連携に終始すれば、マネジメントの負荷だけが増大するのも事実である。

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研究開発のマネジメント人材に期待される役割

研究開発マネジメント人材に求められる役割には、大きく以下の3つがあげられる。

方向性を定め、研究開発を戦略・ビジョンへ接続する

1つ目は、方向性の決定および戦略・ビジョンへの接続である。

研究者は専門領域に集中しがちであるため、テーマが部分最適に陥るリスクがある。研究開発をマネジメントする立場であれば、中長期の経営方針や社会環境の変化を踏まえ、どの技術領域に注力すべきか、どの価値創出を目指すのかを言語化し、研究の軸を定める必要がある。

これにより、研究開発は単なる技術追求ではなく、企業の将来像を実現するための手段として位置付けられる。戦略やビジョンと接続された明確な方向性は、研究者の判断基準となり、組織全体の一体感や投資の妥当性を高める基盤となる。

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研究開発テーマを創出・選定し、意思決定を行う

2つ目は、多数のアイデアや技術シーズの中から、投資すべき研究開発テーマを創出し、取捨選択する意思決定の役割が期待される。

研究現場では多様な可能性が生まれる一方、すべてに資源を投入することは現実的ではない。研究開発におけるマネジメントでは、市場性や事業化の見通し、技術的な実現性、リスクとリターンのバランスなどを総合的に評価し、限られたリソースをどこに集中させるかを判断する必要がある。

なお、判断は一度きりではなく、研究の進捗や外部環境の変化に応じて継続的に見直されるべきである。こうした冷静かつ透明性のある意思決定が行われることで、研究開発は偶発性に頼らず、再現性のある成果創出へと近づくだろう。

研究成果を事業・製品につなげる

3つ目は、研究段階で得られた成果を事業や製品として具現化する橋渡し役が求められる。研究成果が技術的に優れていたとしても、そのままでは顧客価値や収益につながらない場合が多い。

研究開発マネジメントにおいては、研究成果がどの市場で、どの顧客課題を解決できるのかを具体化し、開発、製造、営業などの関連部門と連携しながら実装へと導く必要がある。

また、試作や実証、量産化の過程ではコスト、品質、スケジュールといった現実的な制約が顕在化するため、それらを踏まえた調整や優先順位付けも重要となる。なお、研究成果を価値に転換できるかどうかは企業競争力を左右する要素であり、この接続を担う役割こそが研究開発マネジメント人材に最も求められる役割と言っても過言ではないだろう。

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研究開発のプロジェクトを円滑に進めるために必要なこと

研究開発プロジェクトを停滞させず、成果へとつなげるために押さえるべき要点を5つ紹介する。

出口の明確化と合意形成

1つ目のポイントは、出口の明確化と合意形成である。出口とは、技術が最終的に誰に、どのような価値を提供し、どの形で事業や製品に結実するのかを具体的に定義することである。

単に技術的に成功することを目標とするのではなく、想定市場、顧客価値、目標コスト、収益性、知財戦略、規制対応までを含めて描く必要がある。これらが曖昧なままでは、開発の進捗とともに期待値のズレが拡大し、後工程での手戻りや停滞を招く。

加えて、研究部門だけで完結させず、製造、販売、法務、経営層など関係部門と早期から出口像を共有し、マイルストーンごとに合意を形成していくことも重要である。共通のゴールを持つことで判断基準が揃い、開発の優先順位や継続可否の判断も行いやすくなり、プロジェクト全体の推進力が高まる。

ステージゲート法による迅速な意思決定

2つ目のポイントはステージゲート法を活用し意思決定を迅速に行うことだ。ステージゲート法とは、研究開発プロセスを複数の段階に区切り、各段階の終了時点で事前に定めた評価基準に基づき、次工程へ進むか、修正するか、あるいは中止するかを判断する管理手法である。

これにより、すべてを最後まで進めるのではなく、節目ごとに客観的な判断を下すことが可能となる。評価項目には技術的達成度だけでなく、市場性や実現可能性、リスクの大きさなども含まれ、判断の透明性と納得感が高まる点が特徴だ。

早期に課題を顕在化させ、継続可否を判断できるため、限られた時間や資源を有望なテーマに集中させることができる。結果として意思決定のスピードが向上し、研究開発全体の効率と成功確率を高めることにつながるだろう。

アジャイル的なアプローチ

3つ目のポイントは、アジャイル的なアプローチである。アジャイルとは、計画を固定せず短いサイクルで試行と改善を繰り返し、変化に柔軟に対応する進め方である。

その中核となる考え方がMVPであり、これは実用最小限の製品を意味する。完成度を追求する前に、必要最低限の機能を備えた試作品を早期に市場や顧客に提示し、実際の反応やフィードバックを得ることを重視するといいだろう。

また、1〜2週間程度の短いスプリントで仮説検証を繰り返すことで、課題や方向性のズレを早期に修正できる。結果として、無駄な開発を減らし、不確実性の高い環境下でも研究開発を前進させやすくなる。

心理的安全性の確保とリソースの管理

4つ目のポイントは、心理的安全性の確保とリソース管理である。心理的安全性とは、失敗や疑問を表明しても不利益を被らないとメンバーが感じられる状態を指す。これが担保されることで、率直な意見交換や早期の問題共有が促進され、品質低下や手戻りの芽を早く摘むことができる。

一方で、限られた人材、時間、予算を見極めて配分するリソース管理も重要である。過度な負荷は思考の硬直やミスを招き、逆に余力のない計画は挑戦的な発想を阻害する。人と資源の状態を継続的に把握し、適切に調整することが、研究開発の持続的な前進を支える。

手戻りや二度手間などを解消するデジタル基盤の構築

5つ目のポイントは、手戻りや二度手間を防ぐためのデジタル基盤の構築である。研究開発では、仕様書、実験データ、設計情報、議事録など多様な情報が発生するが、これらが分散・属人化すると認識のズレや重複作業が起こりやすい。

共通のデジタル基盤上で情報を一元管理し、常に最新版にアクセスできる環境を整えることで、判断の誤りや再作業を大幅に減らせる。さらに、データの履歴管理や変更理由の可視化により、過去の検討経緯を容易に追跡でき、意思疎通のコストも下がる。

研究と開発、関連部門が同じ情報を同じ粒度で共有しなければ、プロジェクト全体のスピードと品質を底上げすることはできない。

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研究開発マネジメントが機能しているかを確認するために

最後に、研究開発マネジメントが機能しているかを確認するには、成果だけでなくプロセス全体を定期的に点検する必要がある。

まず、研究テーマの継続や中止が感覚や前例ではなく、事前に定めた基準に基づき適切なタイミングで判断されているかを確認することが重要である。また、成功や失敗を問わず、得られた知見や学習が個人に留まらず、文書化や共有を通じて組織に蓄積されているかも見極める必要がある。

さらには、研究テーマが経営戦略や事業ビジョンと結び付いているか、単なる技術検証で終わっていないかも欠かせない観点である。特にPoCで止まり、次の事業化段階に進めていないテーマが常態化していないかを点検することで、研究開発が実際に事業価値を生み出す仕組みとして機能しているかを判断できるだろう。

まとめ

研究開発におけるマネジメントは、事業貢献と効率化が強く求められる現在において不可欠な取り組みである。中長期視点で製品化や事業化を実現するためには、テーマ選定にとどまらず、コア技術の創出や技術戦略、知財戦略まで含めた統合的な管理が必要となる。

その基盤となるのが、的確な情報収集と活用である。個人任せではなく、組織横断で情報を共有し、知見を蓄積できる体制が、継続的に革新的なテーマを生み出す力となる。弊社が提供するAconnectは、生成AIとNLPを活用して社内外の情報を自動で整理・要約し、研究開発マネジメントを支える情報基盤として有効である。

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