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2025.12.09 #新規事業開発

【テンプレート付き】新規事業の企画書作成のポイントと12項目の解説

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新規事業を企画検討する担当者にとって、実現性と説得力を兼ね備えた企画書を作成できるかどうかが、事業承認の成否を左右する重要な要素である。社内の意思決定者を納得させるには、ターゲット顧客や解決すべき課題を正確に捉えた上で、収益化までの筋道を明確に示す必要がある。

しかし多くの担当者が、企画の魅力は十分でも構成の甘さや分析不足により企画書の段階で評価を落としてしまうという悩みを抱えている。

本記事では、企画書作成の基本的な考え方に加えて、押さえるべき12項目を構造的に整理し、事業の価値を正しく伝えるための実践的なポイントを詳しく解説する。また、すぐに活用できるテンプレートも提供する。新規事業の企画を進めたい方は、ぜひご一読いただきたい。

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新規事業の企画書とは?

新規事業の企画書は、新たに立ち上げる事業の目的、狙い、提供価値、実現方法を体系的にまとめた文書であり、経営層や関係部門に対して事業の妥当性と実行可能性を示すための意思決定資料である。

単なるアイデアを書き留めた文書ではなく、顧客が抱える課題や市場機会を明確にし、自社が提供できる価値を具体的に提示する必要がある。また、収益モデル、開発体制、スケジュール、リスクと対応策までを含め、事業として成立する根拠を論理的に説明することが求められる。

事業承認に直結するため、企画書は事業の魅力だけでなく、実現のために必要な条件を網羅し、読み手に納得感を与える構成であることが重要だ。

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企画書と提案書の違い

企画書と提案書は似た言葉だが、目的と使われ方が異なる。

企画書は、自社で新しく行う事業や施策の全体像を整理し、「何を・なぜ・どう進めるか」を社内の意思決定者に示すための設計図である。市場規模や顧客課題、提供価値、収益モデル、体制やスケジュールなど、事業として成立させるための前提条件を網羅的にまとめる点に重心がある。

これに対し提案書は、特定の相手(社外のクライアント)に対し、「この課題に対して自社はこういう解決策を提供できる」というソリューションを売り込むための文書である。相手のニーズに沿ったメリットの強調や比較優位の説明が中心になり、説得と受注・合意の獲得が主目的になる点が企画書との大きな違いだ。

企画書提案書
対象自社社外クライアント
役割新規事業や施策の全体像を整理した設計図特定の相手に対して課題に対する自社の解決策、説得、合意取得。
記載する例・何を、なぜ、どう進めるか
・市場規模
・顧客課題
・提供価値
・収益モデル
・体制
・スケジュールなど
・相手のニーズに沿ったメリット
・比較優位

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なぜ新規事業では企画書が重要なのか

新規事業で企画書が重要なのは、不確実性の高い取り組みに対して「共通の判断材料」と「実行の道筋」を与える役割を果たすからである。新市場や新技術を扱う新規事業では、担当者の頭の中だけにある構想のままでは、経営層は投資判断ができず、関係部門も協力のしようがない。

企画書として、狙う顧客と解決する課題、市場規模、収益モデル、必要なリソース、リスクと前提条件を言語化することで、事業の実現可能性を客観的に評価できるようになる。また、企画書は一度承認を得るための資料であると同時に、その後の事業推進の「設計図」として機能する。

さらに、KPIやマイルストーンを記載しておけば、進捗管理や軌道修正の基準にもなる。他にも、メンバーが入れ替わっても企画の意図や背景を共有しやすくなり、組織として継続的にプロジェクトを推進できるからだ。

新規事業企画書を作成する際に入れるべき12項目

以下で紹介する12項目を新規事業企画書に含めることで、説得力と実現可能性の高い提案に仕上げられるだろう。

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エグゼクティブサマリー

1つ目の項目は、エグゼクティブサマリーである。エグゼクティブサマリーは、新規事業企画書の全体像を最初に簡潔かつ明確に伝えるためのパートで、忙しい経営層は詳細を読む前にここだけで判断する場合も多く、事業の骨子が一枚で理解できる構成が理想だ。

ここでは、どのような事業なのか、狙う市場規模と期待されるインパクト、必要となる投資額と回収までのおおまかな道筋を示すことを中心にする。特に、新規事業として実行する価値があるのかを短時間で判断できるよう、抽象的な表現を避け、定量的な見通しや実現可能性を示すことが重要だ。

新規事業が必要な背景や課題

2つ目の項目は、新規事業が必要な背景や課題である。新規事業が必要な背景や課題では、この事業を企画する理由と必然性を論理的に示すことが必要だ。

まず、市場や業界で起きている変化として、技術革新や規制の変更、新興プレーヤーの台頭などを具体的なデータや事例とともに示す。次に、自社の現状と課題として、売上構成の偏りや既存事業の伸び悩み、強み・弱みを整理し、現状の延長線上では将来リスクが高いことを明らかにする。

そのうえで、なぜ今このタイミングで当該事業に取り組む必要があるのかを、機会損失や先行優位性と結び付けて説明すると良いだろう。この項目によって、単なる思いつきではなく、環境変化と自社課題に根ざした戦略的な新規事業であることを示すと説得力が増す。

ターゲット顧客とインサイト

3つ目の項目は、ターゲット顧客とインサイトである。ターゲット顧客とインサイトでは、この事業が“誰の・どんな痛み”を解決するのかを具体的に描き出す必要がある。

まず、想定する顧客の業種や企業規模、部門、役職レベルまで明確にし、代表的な人物像としてペルソナを設定。次に、その顧客が日常的に抱えている課題や不満、現状のソリューションでは満たされていない未充足ニーズを整理することが重要だ。

その際、「なんとなく不便」ではなく、どれくらい深刻な痛みかを、発生頻度や損失金額、業務上・経営上のリスクと結び付けて定量・定性の両面から示すといいだろう。こうしたインサイトが具体的であればあるほど、後続のコンセプトや提供価値の説得力が増し、「この事業は誰にとって、どれだけ意味があるのか」を読み手に強く印象づけることができる。

事業のコンセプトと提供価値

4つ目の項目は、事業のコンセプトと提供価値である。事業のコンセプトと提供価値では、この新規事業が一言で言うと何をする事業なのか、その核となるコンセプトをまず明確に示すことが重要だ。

また、顧客がその事業を利用することで得られるベネフィットを、機能やスペックではなく「時間が短縮される」「コストが下がる」「ミスが減る」「売上が伸びる」といった結果ベースで整理する。

加えて、その価値を自社が提供する理由として、自社が持つ技術力、ブランド力、既存顧客基盤、チャネルなどの強みをどう活用するのかを示すことで、競合ではなく自社が取り組む必然性を説明できる。コンセプトと提供価値、自社の強みが一貫していれば、読み手にとって「この事業は筋が良い」と判断しやすくなるだろう。

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サービス・プロダクトの概要

5つ目の項目は、サービス・プロダクトの概要である。サービス・プロダクトの概要では、提供するサービスやプロダクトの中身を具体的に描写する必要がある。

まず、どのような機能やサービスメニューを持つのかを整理し、代表的なユースケースや利用シーンと結び付けて説明することで、読み手が実際の利用イメージを持てるようにすることが重要だ。

また、それと併せて顧客が最初にサービスを知り、申し込み・導入し、日常的に利用し、必要に応じて解約・更新するまでの一連の利用フローを示すといい。この流れを示すことで、顧客接点や運用上の前提条件、サポートの必要箇所などもクリアになり、企画の実行可能性や運営負荷を検討しやすくなる。

市場規模や成長性、主要な競合

6つ目の項目は、市場規模や成長性、主要な競合だ。市場規模や成長性、主要な競合では、その事業がどれだけ伸びしろのある土俵で戦おうとしているのかを示すことが求められる。

まず、対象となる市場の全体規模と成長率をTAM・SAM・SOMなどの考え方も踏まえて大まかに示し、「この市場に参入する意味があるのか」「いつまで成長が見込めるのか」を説明する。次に、主要な競合プレイヤーを挙げ、それぞれの機能・価格帯・ポジションを整理し、自社案との違いを明確にする。

そのうえで、自社はどのセグメントで優位を取るのか、どのニッチや顧客層で勝ち筋を見込むのかといったポジショニングを示すことで、「なぜこの事業で勝てるのか」を経営陣に納得させるパートとなるだろう。

収益構造とビジネスモデル

7つ目の項目は、収益構造とビジネスモデルの提示だ。収益構造とビジネスモデルでは、その事業がお金をどのように生み出し、どの程度の利益が見込めるのかを示す。

具体的には、初期導入費用、月額・年額のサブスクリプション、ライセンス料、取引ごとの手数料など、収益源の種類と組み合わせを概算でもいいので明確にする必要がある。あわせて、想定する価格帯と、売上に対してどの程度の原価がかかるかを、人件費・仕入れ・システム利用料など大まかな区分で示すとよい。

他にも、1顧客あたりの平均売上や継続期間から算出したLTVのイメージを示すことで、事業の採算性やスケールした際のポテンシャルを経営陣に伝えられるだろう。

マーケティング戦略や営業戦略

8つ目の項目は、マーケティング戦略や営業戦略である。マーケティング戦略や営業戦略では、この事業をどのような手段で顧客に届け、売上につなげていくかを具体的に示す。

まず、既存営業チャネル、代理店やSIerなどのパートナー、ウェビナーや展示会、オンライン広告など、どのチャネルで見込み顧客を獲得するのかを整理する。そのうえで、リード数や商談数、受注率、契約更新率といったKGI・KPIを設定し、どの指標をどの期間でどこまで伸ばすのかを明確にすることが重要だ。

また、誰に対して、どのような提供価値を、どんなメッセージとクリエイティブで伝えるのかというプロモーション方針も企画書に落とし込む。これにより、単なる「売る努力をします」という抽象論ではなく、再現性のある顧客獲得・拡大の絵姿をステークホルダーに示すことができる。

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開発・運用体制

9つ目は、開発・運用体制を記載するといいだろう。開発・運用体制では、この事業を回すためにどんな機能がどれだけ必要かを具体的に示すといい。

具体的には、プロダクト開発(エンジニア)、営業、カスタマーサクセス(サポート)、企画・事業管理など、必要な役割を明確にし、何名くらい必要なのかを整理する。そのうえで、社内の既存メンバーでどこまでカバーできるのか、不足分を外部パートナーや業務委託で補うのかといったリソース戦略を企画書に落とし込むといいだろう。

併せて、プロジェクトの意思決定プロセスや権限範囲、品質管理・セキュリティ・法令遵守といったガバナンスの基本方針も明記することで、スケールした後も安定して運営できる組織設計になっていることをステークホルダーに示せるとなお良い。

スケジュールやマイルストーン

10個目の項目では、スケジュールやマイルストーンを記載である。スケジュールやマイルストーンでは、企画立案、PoC(検証)、プロトタイプ開発、クローズドテスト、本格リリースといった主要フェーズを整理し、それぞれの到達目標と完了条件をマイルストーンとして定義することが重要である。

あわせて、採用や体制構築、システム開発、パートナー契約など他タスクとの依存関係も盛り込み、無理のない工期とバッファを設定する必要がある。少なくとも初年度から2〜3年先までのロードマップを示し、「いつまでに何を達成すれば次の投資判断ができるのか」という意思決定の基準を明確にすることで、経営陣が事業の進捗とリスクをイメージしやすくなる。

収支計画や目標(KPI)

11個目の項目は収支計画と目標(KPI)である。収支計画や目標(KPI)では、開発費・人件費・広告費・設備投資などの初期投資と、月次のランニングコストを整理し、そのうえで売上予測を悲観・標準・楽観の複数シナリオで試算することが重要だ。

あわせて、損益分岐点に到達する時期や投資回収のタイミングを明示し、「何年目から黒字化するのか」を一目で分かるようにすると経営者や投資家に説得できるだろう。さらに、売上高や契約数、解約率、LTVなど事業の健全性を測るKPIを設定し、年度ごとの目標値として落とし込むことで、企画後のモニタリングと軌道修正が行いやすくなる。

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リスクと打ち手

最後に、リスクと打ち手を記載することをおすすめしたい。リスクと打ち手では、この新規事業がどのような理由で失敗し得るかをあらかじめ洗い出し、その際に取る具体的な対策までセットで示すことが重要である。

技術面では開発難易度や性能未達、顧客面では想定ニーズとのズレや受容性の低さ、競合面では大手参入や価格競争、法規制面では制度変更や許認可の遅れなどを整理し、それぞれに対して代替案やピボットの選択肢を用意しておくと良い。

あわせて、どの指標がどの水準を下回ったら投資を縮小・停止するのかといった撤退ラインも明記することで、経営陣はリスクとリターンのバランスを判断しやすくなる。

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新規事業企画書を作成する際のポイント

根拠の強さや検証の進め方を押さえることで、実行可能性の高い企画書へと仕上げられるため、新規事業企画書の質を大きく左右するポイントを5つ紹介する。

信頼できる情報ソースを含める

まず、信頼できる情報ソースを含めることは、新規事業企画書の説得力を高めるうえで不可欠である。公的統計、業界団体のレポート、著名調査会社の市場調査、政府・自治体の資料など、第三者性の高いデータを根拠として引用することが重要だ。

また、出典を明示することで、数字や主張が思いつきではなく検証可能な情報に基づいていると示せるため、経営層や関係部門からの信頼を得やすくなる。さらに、複数ソースを照合し、恣意的に都合のよいデータだけを抜き出さない姿勢も求められる。情報源の質と透明性を担保することが、企画の実現可能性を評価してもらうための前提条件となる。

定量的なデータを含める

次に、定量的なデータを含めることは、新規事業企画書の説得力と再現性を高めるうえで不可欠である。市場規模や成長率、想定顧客などを具体的な数字で示すことで、事業のポテンシャルやリスクを客観的に評価しやすくなる。

また、売上予測や損益分岐点も数値で示すことで、「なんとなくいけそう」ではなく、前提条件を共有したうえで議論できる。なお、数字は完璧である必要はないが、計算プロセスや根拠を明確にすることで、企画の妥当性と実行可能性をより納得してもらいやすくなる。

顧客や現場の声、データを含める

また、顧客や現場の声、現場で取得したデータを企画書に盛り込むことをおすすめする。アンケート結果やインタビュー内容、問い合わせ内容、PoCやテスト導入時の利用状況などを反映させることで、机上の空論ではなく、実際のユーザー行動に根ざした企画であることを示せる。

加えて、顧客がどの場面で困っているのか、今はどのような代替手段でしのいでいるのかといった生の声は、機能優先の発想にブレーキをかけ、価値提案を磨き込む材料になる。

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経営者および投資家の視点でまとめる

そして、新規事業企画書は、現場担当者の熱意だけでなく、経営者や投資家の視点で読んでも筋が通る構成にすることが大切だ。具体的には、「いくら投資して、いつまでに、どれくらいのリターンが期待できるのか」「既存事業とのシナジーは何か」「なぜ自社がこの領域で勝てるのか」といった関心に答える形でストーリーを組み立てる必要がある。

また、限られたリソースの中で他案件との優先順位付けがしやすいように、事業のスケールポテンシャルやリスクの大きさも明確に示すとよい。経営層が意思決定しやすい視点と順序で整理することで、企画を前に進めることができるだろう。

最小検証(MVP)を定義する

最後は、最小検証(MVP)を定義するを忘れてはならない。MVPとは「Minimum Viable Product」を指し、この事業は本当にニーズがあり、お金を払ってくれる顧客がいるのかを、最小限の機能とコストで確かめる実験プランを企画書の段階で明らかにしておくことを指す。

完成版のサービスをいきなり作るのではなく、プロトタイプや一部機能のみの提供、限定エリアでのテスト販売など、最小単位で検証する方法・期間・評価指標を具体的に決めることが重要である。これにより、早期に顧客の反応を確認しながら事業仮説を修正できるため、無駄な投資を抑えつつ成功確率を高めることができる。

新規事業企画書作成における失敗

最後に、新規事業企画書で陥りがちな失敗例を3つ紹介する。

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データや説得力が不十分

新規事業企画書の作成における1つ目の失敗は、データや説得力が不十分であることだ。例えば、市場規模の根拠が曖昧であったり、顧客のニーズを裏づける情報が主観的であったりすると、企画の実現可能性が評価できず、意思決定者は投資判断を下せない。

特に売上予測や成長性の説明に具体的な数値が欠けると、「なぜこの事業を今やるのか」という必然性が伝わらない。また、提示するデータの出典が不明確である場合も信頼性が損なわれる。

説得力は、客観的な事実と論理構成によって生まれるため、定量データと質的情報を組み合わせて明確に示す必要がある。

顧客課題ではなく、自社のやりたいことから始めてしまう

また、2つ目に新規事業企画書でよく見られる失敗は、顧客課題ではなく自社のやりたいことから企画を出発させてしまうことである。自社の強みや技術を基点に構想を練ること自体は有益だが、そのアイデアに適切な市場が存在しなければ事業は成立しない。

かつては優れた製品を作れば自然と需要が生まれる状況もあったが、現在は競合サービスが数多く並び、顧客の選択肢が飽和している。そのため、まず顧客が何に困っているのか、どの課題が解決されていないのかを把握し、そのニーズに応える形で事業を設計することが不可欠である。

市場に求められていないサービスを提供しても、利用されず、収益も確保できない。事業の出発点を顧客の痛みや未充足ニーズに置くことが、新規事業成功の前提となる。

巨額の投資や長期的な開発が前提となってしまう

最後に、巨額の投資や長期的な開発を前提に構想を組み立ててしまうと失敗に終わる可能性が高くなる。これは、経営者や投資家が不確実性を嫌うため、初期から多額の資金投入を要し、回収までの期間が長い企画は承認されにくいためだ。

なお、大型事業そのものが悪いのではなく、実現可能性を具体的に示せていない点に問題がある。例えば、最小限の機能で検証するMVPの設定や、損益分岐点・投資回収期間の見通しが明確であれば、リスクを抑えた形で段階的に事業を進められると判断され、評価は大きく変わる。

新規事業では理想を追いがちだが、社会や市場、会社、自分の立場まで含めてすべてが納得できる落とし所を設計することが重要であり、そこが示せないと企画は机上の空論として失敗してしまう。

まとめ

新規事業の企画書は、単なるアイデアの整理ではなく、事業として成立する根拠を示す重要なビジネス文書である。そのため、事業の目的や狙い、市場性、収益性などが明確かつ一貫性のある形で記述されていることが欠かせない。

また、顧客の課題や市場データ、競合情報などの客観的な根拠を基に構築された企画書でなければ、読み手である経営者や投資家を納得させることはできない。さらに、企画書を誰がどの場面で使うのかを想定し、過不足のない情報量と分かりやすい構成にまとめることが重要である。

本記事で紹介した項目やポイントを踏まえて作成すれば、説得力のある企画書となり、新規事業を前進させる強力な武器になるだろう。

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