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新規事業の立ち上げ完全ガイド!10のプロセスと成功させるポイントを徹底解説

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市場環境の変化が激しさを増す現代において、既存事業だけに依存した経営は大きなリスクを伴う。多くの企業が新たな収益源の確保や成長機会の創出を目指して新規事業に取り組む一方で、明確な手順や判断基準を持たないまま進めた結果、途中で頓挫するケースも少なくない。

新規事業の立ち上げ成功確率を高めるには、感覚や思いつきではなく、体系化されたプロセスと実行体制が不可欠である。

本記事では、新規事業を構想段階から事業化へ導く9つのプロセスと、現場で実践できる成功のポイントを整理し、再現性のある立ち上げの進め方を解説する。企業の持続的成長を実現するための実践的な指針として活用いただきたい。

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目次

なぜ企業にとって新規事業が重要なのか

企業が新規事業に取り組むべき理由には、経営の存続から成長、人材戦略まで関わる3つの重要な視点がある。それぞれの観点から、新規事業が果たす役割を解説する。

既存事業からリスクを分散し変化へ適応するため(生存戦略)

新規事業が重要である1つ目の理由は、既存事業への依存を減らし、環境変化に適応する「生存戦略」のためである。

成熟した市場では需要が伸びにくく、価格競争や規制強化、技術革新によって収益構造が短期間で崩れることがある。加えて、原材料高や為替変動、災害、地政学的リスクのように、企業努力だけでは制御できない外部要因も増えている。

単一事業に売上や利益が偏るほど、こうした変動が直撃し、投資余力や人員配置まで連鎖的に悪化しやすい。新規事業は、収益源を複線化し、特定市場の不調が全社の経営危機に直結する事態を避けるための保険として必要だ。

また、既存顧客のニーズ変化や代替技術の台頭に対し、別の価値提供軸を持つことで撤退や縮小を含む判断の自由度を高めるためでもある。変化が早いこの時代において、新規事業は攻めの施策である以前に、企業が生き残るための構造的なリスク分散策だ。

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持続的な成長と利益を最大化するため(成長戦略)

新規事業が重要な2つ目の理由は、持続的な成長と利益を最大化する「成長戦略」のためである。

既存事業で一定の市場シェアを占めると需要の伸びが鈍化する傾向にある。また、価格競争が激化し、利益率が低下する局面に入ると、従来と同じ事業だけでは売上や利益の拡大は難しくなる。この状態を打破するためには、新しい市場や顧客層を開拓し、新たな収益源を生み出す必要がある。

新規事業は、企業が保有する技術や顧客基盤、ブランド力などの資産を別の領域で活用することで、付加価値の高いビジネスへと展開することが可能だ。特に成長分野に早期参入できれば、競争優位を築きながら高い利益率を確保できる可能性がある。

こうした新しい取り組みを継続することで、企業は収益構造を強化し、長期的に安定した成長を実現できる。

イノベーションの醸成と優秀な人材の獲得(組織戦略)

新規事業が重要な3つ目の理由は、イノベーションを組織内に根づかせ、優秀な人材を獲得・定着させる「組織戦略」のだめだ。

既存事業は成果指標や業務手順が固定化しやすく、失敗回避が優先されると挑戦が生まれにくい。それに対し、新規事業は仮説検証を前提に、顧客理解から価値提案、検証、改善を高速に回すため、部門横断の協働や意思決定の迅速化を促し、組織文化そのものを更新する装置となる。

実際に、挑戦機会がある組織は、社員の学習意欲や当事者意識が高まりやすく、閉塞感の解消につながる。さらに採用面でも、成長機会や裁量、社会課題への取り組みを重視する人材に対して、新規事業の存在は企業の魅力を具体的に示す要素となる。

事業をつくる経験を提供できる企業は、社内外の人材が集まりやすく、結果として新しい挑戦が連鎖する。新規事業は、組織を活性化させるための基盤ともいえるだろう。

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新規事業の立ち上げで必要な要素

新規事業を形にするためには、構想やプロセスだけでなく実行を支える2つの基盤が欠かせない。

基本的な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)

まず前提として、新規事業の立ち上げでは、ヒト・モノ・カネ・情報のいわゆる「基本的な経営資源」の確保が不可欠だ。

まずヒトは、事業を推進する中核人材だけでなく、顧客理解、開発、販売、法務、会計などを横断できる体制のことを指す。次にモノは、試作や検証に用いる設備、開発環境、データ基盤、提携先のネットワークなど、価値提供を具体化するための手段である。

カネは、売上が立つ前に発生する人件費や開発費、広告費を賄う原資であり、資金がある程度確保できれければ検証が途中で止まりやすい。そして、最後に情報は、市場規模や競合動向だけでなく、顧客の業務実態や購買決定プロセス、価格許容度といった一次情報を含む。

新規事業は不確実性が高いからこそ、これらの資源を投入し、仮説検証の質と速度を担保することが絶対だ。

ウィル(想い)と仕組み

一方で、基本的な経営資源だけでは、新規事業の立ち上げはうまくいかない。新規事業の立ち上げには、担当者や経営陣のウィル、すなわち実現したいという想いと、それを継続的に実行できる仕組みの両立が不可欠だ。

新規事業は不確実性が高く、短期的な成果が見えにくいため、途中で方針転換や中止の議論が起こりやすい。このとき、事業の意義や目指す価値に対する明確なウィル(想い)がなければ、判断が場当たり的になり、挑戦そのものが継続できなくなる。

一方で、想いだけでは組織内での合意形成や資源配分は進まない。意思決定のプロセス、評価指標、予算管理、撤退基準といった制度を整え、挑戦を正当に評価する仕組みが必要となる。こうした仕組みがあって初めて、個人の情熱が組織の行動として持続し、新規事業が計画的に前進する状態をつくり出せる。

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新規事業の立ち上げを成功させる10のプロセス・流れ

新規事業を構想から事業化へ導くには、再現性のある進め方が欠かせない。成功確率を高めるために押さえるべき9つのプロセスを順を追って紹介する。

自社の強みや理念の確認

新規事業の立ち上げにおける最初のプロセスは、自社の強みや理念の確認である。新規事業は単なる思いつきや流行の追随では成功しにくいため、企業が長年培ってきた技術、顧客基盤、ブランド力、組織文化といった固有の資産をどのように活かすかが重要だ。

例えば、製造技術に強みを持つ企業であれば、その技術を応用できる周辺領域に着目することで、他社との差別化が可能になる。また、企業理念や存在意義を再確認することで、目指すべき価値や社会的役割が明確になり、事業の方向性に一貫性が生まれる。

理念と乖離した事業は社内の共感を得にくく、長期的な投資判断が難しい。自社の強みと理念を整理する作業は、単なる内省ではなく、どの領域で戦うべきかを定める戦略的な出発点となり、後の意思決定や資源配分において、判断の軸を失わずに事業を推進できる。

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課題の特定とアイデアの創出

2つ目のプロセスは、解くべき課題を特定し、それを起点にアイデアを創出することである。ここでいう課題は、顧客が日常業務や生活の中で抱える不便、不安、非効率、未充足の欲求のことを指す。

重要なのは、表面的な要望ではなく、なぜそれが問題なのかという背景まで掘り下げ、発生頻度、影響範囲、放置した場合の損失を具体化することだ。例えば、現場での手戻りが多いという事象の背後には、情報共有の断絶や判断基準の曖昧さが潜んでいることがある。

そして、課題を定めたら解決策は一つに絞らず、制約条件を外してアイデアを創出することだ。既存の常識を前提にしてしまうと改善案に留まりやすいため、置き換え、組み合わせ、分解、逆転といった視点で複数のアイデアを出し、課題に対して最も筋の良い方向性を見つけることが重要である。

課題の粒度を誤ると事業の焦点がぼやけるため、誰の何をどの状態に変えるのかまで具体化したうえでアイデアへ落とし込む必要がある。

市場の調査と分析

3つ目のプロセスは、市場の調査と分析だ。どれほど魅力的なアイデアであっても、市場規模が極端に小さかったり、すでに強力な競合が支配していたりすれば、事業として成立しにくい。

そのため、まずは対象となる市場の規模や成長性、主要プレイヤーの構成、価格帯、流通構造などを整理し、参入余地があるかを確認する必要がある。また、顧客セグメントごとのニーズや購買行動の違いを把握し、どの層に価値を提供するのかを具体化することも欠かせない。

他にも、法規制や業界の慣行、技術トレンドといった外部要因もあわせて分析するといいだろう。公開資料や統計データだけでなく、実際の顧客や業界関係者へのヒアリングを通じて一次情報を収集することで、机上の仮説と現実のギャップを埋められる。

こうした調査と分析を通じて、市場の構造と機会を立体的に理解することが、のちの意思決定の精度を高めるのだ。

コンセプトとドメインの決定

4つ目のプロセスは、コンセプトとドメインの決定である。コンセプトとは、誰に対してどのような価値を提供するのかを端的に示す事業の核心であり、顧客がその事業を選ぶ理由そのものを言語化したものである。

一方で、ドメインは「事業が活動する領域や範囲」を指し、どの市場で、どの顧客層に対して、どのような手段で価値を提供するのかを定義する枠組みである。ここが曖昧なままだと、製品仕様や営業方針、投資判断がぶれやすくなり、事業の焦点が定まらない。

例えば、同じ技術を活用する場合でも、対象顧客や用途をどこに設定するかによって、求められる機能や価格帯、販売チャネルは大きく変わる。コンセプトとドメインを明確にすることで、事業の戦う土俵が定まり、以降の意思決定に一貫した判断基準を持たせることができる。

ビジネスモデルとマネタイズポイントの検討

5つ目のプロセスは、ビジネスモデルとマネタイズポイントの検討である。そもそも、新規事業が事業として継続的に収益を生み出せるのか、利益を生み出す構造が明確でなければ、どれほど優れた技術やサービスであっても事業として成立しない。

ここのプロセスでは、顧客に提供する価値と、その対価としてどのように収益を得るのかを具体的に整理することが重要だ。例えば、製品販売型なのか、サブスクリプション型なのか、あるいは広告やデータ活用による収益モデルなのかによって、価格設定や顧客との関係性、必要なコスト構造は大きく変わる。

また、どのタイミングで収益が発生するのか、主要な収益源はどこにあるのかといったマネタイズポイントを明確にすることで、投資回収の見通しを立てやすくなる。加えて、初期顧客の獲得方法や、顧客単価と獲得コストのバランスなども検討し、持続的に利益を生み出せる構造を設計することが重要である。

この工程によって、事業の収益性と実現可能性を具体的な数字として把握できるようになる。

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事業計画書の作成

6つ目のプロセスは、新規事業を社内外に説明可能な形に落とし込み、意思決定と実行を前に進めるための事業計画書の作成である。計画書は単なる資料ではなく、事業の仮説を数字と文章で一貫させ、投資判断に耐える論拠を整える必要がある。

具体的には、提供価値と対象顧客、提供方法、競合との差別化、必要な投資とコスト、売上の立ち方、収益化までの時間軸を整理し、損益の見通しを示す。特に重要なのは、楽観的な予測を並べるのではなく、前提条件を明確にし、どの指標が崩れると計画全体が成り立たなくなるのかを可視化することだ。

なお、事業計画書にマイルストーンや検証項目を織り込めば実行管理の基準にもなる。

撤退基準の決定

7つ目のプロセスは、撤退基準の決定だ。これは新規事業の失敗を前提にするためではなく、限られた資源を合理的に配分し続けるために行うものだ。新規事業は不確実性が高く、途中で前提が崩れたり、想定より学びが得られなかったりする局面が必ず訪れる。

そのとき、撤退の基準が曖昧だと、既に投下したコストを惜しんで継続してしまうサンクコストの罠に陥り、損失が拡大しやすい。撤退基準は、一定期間内に到達すべき成果や検証結果を条件として定め、未達の場合は縮小、方向転換、停止といった判断を事前に合意しておく枠組みである。

例えば、顧客獲得数や継続率、単価、粗利などの指標を置き、どの水準を下回れば事業性が成立しないのかを明確にすることで、感情論ではなく事実に基づく判断が可能となる。また、撤退は単純な中止ではなく、知見を次の挑戦へ移すための区切りでもある。

撤退基準を持つことは、挑戦を継続可能にするための規律であり、経営と現場の意思決定の速度を高める装置でもある。

体制の構築および環境の整備

8つ目のプロセスは、体制の構築および環境の整備である。新規事業は既存事業とは異なるスピードや判断基準が求められるため、専任メンバーの配置や意思決定の権限設計が不可欠といえる。

例えば、事業責任者を明確に定め、開発、営業、マーケティングなどの機能を横断した少人数のチームを編成することで、迅速な意思決定と柔軟な方向転換が可能になる。また、評価制度や予算管理の仕組みも重要であり、短期的な利益だけでなく、検証の進捗や顧客からの学習量を評価指標に組み込むことで、挑戦を後押しする組織文化を形成できる。

他にも、外部パートナーとの連携や実証を行うための設備、ツールの確保、法務や知財面のサポート体制なども整える必要もある。

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テストマーケティングの実施

9つ目のプロセスは、テストマーケティングの実施だ。これは、新規事業を本格的に展開する前に、顧客が本当に価値を感じて対価を支払うかを現実の市場で確かめる工程である。社内評価やアンケートだけでは、購入行動の本質である時間、手間、費用の負担を伴う意思決定は再現できない。

そこで、最小限の機能や提供範囲に絞った試験提供を行い、顧客の反応を定量と定性の両面で検証する。例えば、問い合わせから商談化、申込、継続利用までの各段階で離脱が起きる要因を把握すれば、提供価値や導入障壁の問題点が明確になる。

なお、テストマーケティングの目的は売上最大化ではなく、事業仮説の当否を最短で判定することにある。反応が弱い場合は、機能の優先順位や訴求軸、提供方法を修正し、再度検証する。この反復によって、実装すべき価値と不要な機能が峻別され、本格展開に向けた成功確率が高まる。

本番ローンチとスケール

そして、最後は検証を終えた事業を正式な商品・サービスとして市場に投入し、売上と顧客基盤を拡大していく段階である。このフェーズでは、限定的な試験提供とは異なり、安定した供給体制や顧客対応体制、品質管理の仕組みを整え、継続的に提供できる状態を構築する必要がある。

また、営業やマーケティング活動を本格化させ、ターゲット顧客層への認知拡大と受注増加を図ることが重要となる。ここでは単に販売量を増やすだけでなく、顧客獲得コストや継続率、利益率といった主要指標を継続的に監視し、収益構造が健全に拡大しているかを確認することが欠かせない。

需要の増加に応じて人員や設備、パートナー企業との連携を強化し、供給能力を段階的に引き上げることも求められる。こうした拡大過程では、品質のばらつきや顧客対応の遅れがブランド価値を損なう要因となるため、標準化された業務プロセスや教育体制の整備も不可欠である。

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新規事業の立ち上げにかかる期間の目安

新規事業の立ち上げにかかる期間は、業種やビジネスモデル、開発の難易度によって大きく異なるが、一般的には構想から本格展開までおよそ1年から3年程度が一つの目安とされる。

例えば、既存の技術やサービスを応用した比較的シンプルな事業であれば、半年から1年程度で試験提供に到達するケースもある。一方で、新しい技術開発を伴う製造業や、規制対応が必要な医療・金融分野などでは、研究開発や認証取得に時間を要するため、3年以上の長期プロジェクトになることも珍しくない。

一般的な流れとしては、最初の数カ月で事業の方向性や仮説を整理し、その後6カ月から1年ほどかけて試作品の開発や市場検証を行う。そこで一定の手応えが得られれば、本格的な商品化や販売体制の整備に移行し、さらに半年から1年以上をかけて事業を拡大していく形となる。

重要なのは期間の長短そのものではなく、各段階で明確な評価基準を設け、次のステップへ進むかを判断しながら進めることである。これにより、無駄な投資や時間の浪費を防ぎ、現実的なスケジュールで事業化を目指すことができる。

新規事業立ち上げを成功させるためのポイント

新規事業の成功確率を高めるには、実行段階で押さえるべき要点がある。

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失敗を想定する

1つ目のポイントは、失敗の想定だ。新規事業では、当初の想定どおりに市場が反応することはむしろ少なく、多くの仮説が途中で修正されるのが一般的である。そのため、成功だけを前提に計画を立てるのではなく、どの段階で失敗と判断するか、どこまで投資を許容するかをあらかじめ想定しておくことが重要だ。

また、失敗を許容する文化を組織内に醸成することで、挑戦を恐れずに試行錯誤を重ねられる環境が整う。新規事業は成功確率が低い挑戦であるからこそ、失敗を前提とした計画と意思決定の基準を持つことが、結果的に成功確率を高めることにつながる。

MVPを活用する

2つ目のポイントは、MVPの活用だ。MVPとは、顧客に価値を提供するために必要最小限の機能だけを備えた試作品やサービスを指す。新規事業では、最初から完成度の高い製品を目指して多額の投資を行うと、市場のニーズとずれた場合に大きな損失を招きやすい。

また、完璧を追求するあまり市場への投下が遅くなると、市場やニーズの変化から結果として売れない製品やサービスになる可能性もある。そのため、まずはMVPを開発し、実際の顧客に使ってもらうことで、需要の有無や課題点を短期間で検証することが重要である。

最適なメンバーをアサインする

3つ目のポイントは、最適なメンバーのアサインである。新規事業は既存事業と異なり、正解が見えない状況で仮説を立て、検証しながら方向性を定めていく必要があるため、専門知識だけでなく主体性や柔軟な思考力を持つ人材が求められる。

例えば、顧客課題を発見できるマーケティング視点、製品やサービスを形にする技術力、収益構造を設計するビジネス感覚など、異なる強みを持つ人材をバランスよく配置することが重要である。また、意思決定を迅速に行える権限設計や、他部署との連携を円滑に進める調整力も不可欠となる。

単に営業力が強い人や手が空いている人を配置するのではなく、挑戦意欲や当事者意識を持つメンバーを選抜し、責任と裁量を与えることで、スピード感のある意思決定と実行が可能となる。

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フレームワークを活用する

最後に、新規事業の立ち上げでは、限られた情報の中で意思決定を繰り返す必要があるため、思考を体系化できるフレームワークの活用が有効である。経験や勘に頼った判断だけでは、重要な視点を見落としたり、議論が属人的になったりするリスクが高い。

また、チーム内で共通の言語として機能する点も重要である。フレームワークに基づいて議論を進めることで、認識のズレを減らし、意思決定のスピードと精度を高めることが可能となる。新規事業は不確実性が高い領域であるからこそ、思考の型を活用し、判断の質を安定させることが成功への近道となる。

新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク

以下では、新規事業の検討から市場分析、戦略設計、成長管理までを体系的に進めるために役立つ代表的な9つのフレームワークを紹介する。

【テンプレート付き】新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク9選!効率的に思考を整理し事業構築を目指す

マンダラート

マンダラートは、中心に置いたテーマを起点に発想を広げ、目的達成に必要な要素を体系的に洗い出すための思考フレームワークである。

一般的には3×3のマス目を使い、中央に新規事業の目的や達成したいゴールを据え、周囲8マスにゴールを実現するための主要要素を配置する。さらに各要素を別の3×3に展開し、具体的な施策や行動へ分解していくことで、抽象的な構想を実行可能なタスクへ落とし込める点が強みだ。

新規事業では、アイデアが断片的なまま進むと、検討漏れや優先順位の混乱が起こりやすい。マンダラートを用いれば、価値提供、顧客、提供手段、収益化、リソースなどの論点を俯瞰しながら、思考を網羅的に整理できる。

SCAMPER法

SCAMPER法は、既存の製品やサービス、業務プロセスを出発点に、発想を意図的にずらして新しいアイデアを生み出すための発想支援フレームワークである。

頭の中で自由に考えるだけでは、改善案や延長線上の案に収束しやすいが、SCAMPERは視点を強制的に切り替えることで、発想の幅を広げる役割を果たす。名称は7つの問いの頭文字に由来し、代用する、結合する、応用する、修正する、転用する、削ぎ落とす、再構成するという観点で対象を見直す。

重要なのは、7つの問いを順に当てはめ、量を出してから有望案を選別することである。SCAMPER法はゼロからの創作というより、既存資産を再編集して差別化を作る場面で特に有効であり、新規事業のアイデア創出や提供価値の再設計に役立つ。

3C分析

3C分析は、市場における競争優位の源泉を把握するために、顧客、競合、自社の三つの観点から事業環境を整理するフレームワークである。

新規事業では魅力的なアイデアだけで進めてしまうと、顧客ニーズとのずれや競合との差別化不足によって失敗するケースが多い。3C分析は、誰にどんな価値を届けるのか、その価値は既存の競合と比べてどこが優れているのか、そして自社がそれを実現できる資源や強みを持っているのかを体系的に確認するための思考整理に役立つ。

この3つの要素を重ね合わせることで、参入すべき市場や差別化の方向性が明確になり、実行可能性の高い事業コンセプトを設計できるようになる。新規事業の初期段階で戦略の骨格を固めるために有効な基本フレームワークだ。

4C・4P分析

4C・4P分析は、新規事業の価値設計と市場投入の打ち手を具体化するためのマーケティングフレームワークである。

4Cは顧客視点で整理する枠組みで、顧客が得る便益、顧客が負担する総コスト、購入や利用のしやすさ、顧客とのコミュニケーションという4つの観点から、提供価値と顧客体験を点検する。新規事業では機能の優劣だけでなく、導入の手間や学習コスト、運用負荷といった見えにくい障壁が離脱要因になりやすく、4Cはその盲点を洗い出すのに役立つ。

一方4Pは企業視点で実行計画を組み立てる枠組みで、製品、価格、流通、販促の4つを整合させ、売れる状態を設計する。4Cで顧客が価値を感じる条件を明確にし、4Pでその条件を満たす提供方法と収益化を設計することで、価値と実行が乖離しない事業設計が可能になる。

SWOT・クロスSWOT分析

SWOT分析は、新規事業の戦略立案において、自社の内部要因と外部要因を同時に整理し、打ち手の優先順位を明確にするためのフレームワークである。

強みと弱みは自社の内部にある要素で、技術力、顧客基盤、ブランド、組織能力などが該当する。機会と脅威は外部環境の要素で、市場の成長、規制の変化、技術トレンド、競争激化などが含まれる。

新規事業では、魅力的な機会が見えていても、自社の弱みが足かせとなって実行できない場合がある一方で、強みを活かせば小さな機会でも高い収益性を作れることがある。さらにクロスSWOT分析では、強み×機会で攻め筋を具体化し、弱み×脅威で失敗要因を事前に洗い出すなど、組み合わせから戦略を導くことも可能だ。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、競合がひしめく市場の中で、自社の提供価値をどこに置くべきかを可視化し、差別化の方向性を定めるためのフレームワークである。

2つの評価軸を設定し、縦横の平面上に各社の製品やサービスを配置することで、競争が激しい領域と、まだ空白が残る領域を直感的に把握できる。軸は価格帯と機能充実度、導入の容易さとカスタマイズ性、専門性と汎用性など、顧客が意思決定で重視する要素から選ぶことが重要である。

軸設定を誤ると見えている空白が実は需要のない穴になるため、顧客の比較観点に基づく設計が必要となる。ポジショニングマップを用いると、競合と同じ土俵で機能を積み上げるべきか、あえて別の価値軸で勝負すべきかが判断しやすくなる。

5フォース(ファイブフォース)

5フォースは、業界の収益性がどの構造要因で決まるのかを分析し、新規事業として参入すべきか、参入するならどこで優位を作るべきかを見極めるためのフレームワークである。

分析対象は5つの競争圧力で、既存競合の競争の激しさ、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力から業界を立体的に捉える。新規事業では市場が成長しているという理由だけで参入すると、実際は価格競争が激しく利益が残らない構造だったという失敗が起こりやすい。

5フォースを使えば、例えば買い手の交渉力が強く価格が下がりやすいのか、特定の供給元に依存して原価が上がりやすいのか、代替手段が多く差別化が難しいのかといった利益を圧迫する要因を事前に把握できる。

他にも、参入障壁を高める仕組み、スイッチングコストの設計、供給網の多重化など、戦い方の方向性も見えてくる。5フォースはアイデアの良し悪しではなく、事業が儲かる構造を持つかを判定するための分析に役立つ。

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AISAS・AIDMA

AISAS・AIDMAは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの心理と行動の流れを整理し、マーケティング施策の設計や改善に役立てるフレームワークである。

AIDMAは、注意、関心、欲求、記憶、行動という順で、主にマスメディア中心の時代における購買プロセスを説明していたが、最近ではAISASが主流となっている。AISASは、注意、関心の後に検索と共有が組み込まれており、インターネットやSNSが購買行動に与える影響を前提にしている。

新規事業では、良いプロダクトを作っても顧客がどこで離脱しているかが見えないと改善が進まない。AISASを用いれば、認知が弱いのか、理解が不足しているのか、比較検討の段階で情報が足りないのか、購入後の共有が起きていないのかを段階ごとに切り分けられる。

AARRR

AARRR(アー)は、プロダクトやサービスの成長を数値で管理し、どこに改善余地があるかを特定するためのグロース指標フレームワークである。

顧客が獲得され、使い続け、収益化し、他者へ広げるまでの流れを、獲得、活性化、継続、収益、紹介の五段階に分けて捉える。新規事業は施策を打っても成果が出ない理由が分かりにくいが、AARRRで分解すれば、集客が弱いのか、初回体験で価値が伝わっていないのか、継続利用に至っていないのかといったボトルネックを定量的に把握できる。

重要なのは、五段階すべてを同時に追うのではなく、事業フェーズに合わせて最重要指標を絞り、改善の優先順位を決めることだ。

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新規事業の戦略に欠かせない「アンゾフの成長マトリクス」

最後に、企業の成長戦略を体系的に整理するために不可欠な4つの選択肢を「アンゾフの成長マトリクス」に沿って紹介する。

市場浸透戦略 (既存製品×既存市場)

市場浸透戦略は、既存製品を既存市場でさらに伸ばすという、アンゾフの成長マトリクスの中で最も基本的な選択肢を指す。

事業においては、必ずしも新しい市場や製品に飛び込まなければならないものではなく、現行の提供価値を同じ顧客層で最大化する打ち手が合理的な場合もある。市場浸透戦略では、市場シェアの拡大や利用頻度の向上、単価の引き上げ、解約率の低下などを通じて売上を伸ばすことが該当する。

重要なのは、市場が成熟している場合でも、顧客の未利用層や利用の浅い層が残っていないか、競合と比べて選ばれない理由は何かを構造的に捉えることだ。市場浸透戦略は、既存の資産を活かしながら成果を出しやすく、次の成長投資の原資を生み出す土台としても機能する。

新市場開拓戦略 (既存製品×新規市場)

新市場開拓戦略は、既存製品を新しい市場へ展開するという選択肢であり、アンゾフの成長マトリクスが示す成長方向の一つである。

この枠組みが役立つのは、成長の打ち手を製品の新規性と市場の新規性で分解し、どこに不確実性があるのかを明確にする思考である。新市場開拓戦略では製品そのものは大きく変えない一方で、顧客層や用途、地域、業界、販売チャネルを変え、市場の理解と適応を進めるものだ。

ただし、この戦略で重要なのは、新市場での顧客課題が既存製品の価値と本当に一致しているか、導入障壁を下げるために何を変えるべきかを具体化することである。新市場開拓戦略は、製品開発の負荷を抑えつつ成長機会を取りに行ける一方、市場理解が浅いと刺さらないリスクもあるため、適用条件の見極めが重要といえる。

新製品開発戦略 (新規製品×既存市場)

新製品開発戦略は、既存市場に対して新しい製品やサービスを投入し、売上の上積みや顧客価値の拡張を狙う選択肢である。

既存市場では顧客像や購買プロセス、価格許容度がある程度見えているため、勝ち筋は顧客理解を深め、未解決の課題や周辺ニーズを新たな提供価値として形にすることにある。ただし、新製品が既存製品の単なる置き換えになって売上を食い合わないよう、役割分担と価格体系を整合させることが重要だ。

また、既存顧客の期待値は高く、品質やサポート要求も厳しいため、早期にフィードバックを取り込みながら提供価値を磨く必要もある。新製品開発戦略は、顧客基盤を活かして成長を加速させることが可能なための最も現実的な打ち手だといえる。

多角化戦略 (新規製品×新規市場)

多角化戦略は、新規製品を新規市場へ投入する成長選択肢であり、アンゾフの成長マトリクスの中で最も不確実性が高い領域に位置づく。

この枠組みが役立つのは、成長の打ち手を市場と製品の両軸で整理し、どの選択肢がどれだけリスクと投資を伴うかを可視化する思考である。多角化では、顧客理解も競争環境もゼロに近い状態から始まるうえ、製品も新規であるため、仮説が外れた際の手戻りが大きい。

一方で、成功すれば既存の競争ルールに縛られない新たな収益源を獲得でき、事業ポートフォリオの質を大きく変える可能性がある。実務上は、自社が保有する技術やデータ、ブランド、販売網などを横断的に組み合わせ、これまで届かなかった顧客課題に対して新しい提供価値を作ることが要諦となる。

多角化戦略は大胆な一手であるが、成功には緻密な検証と段階的な投資判断が求められる。

現代において新規事業の立ち上げは「情報量」がカギ

現代の新規事業では、発想の良し悪しよりも、どれだけ質の高い情報を集め、意思決定に反映できるかが成否を分ける要因となる。

市場規模や顧客課題、競合の動き、技術動向といった外部情報に加え、自社の強みやリソースの制約といった内部情報を統合して判断することで、実現可能性の高い戦略が描ける。情報が不足したまま進めば、需要のない市場に参入したり、差別化できない製品を投入したりするリスクが高まる。

逆に、仮説検証を通じて情報量を積み上げていけば、撤退判断や方向転換も迅速に行える。新規事業を成功に近づけるには、計画よりも学習速度を重視し、情報収集と検証を繰り返す仕組みを組織内に持つことが不可欠だといえるだろう。

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