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FMEA(故障モード影響解析)とは?種類やメリット、具体的な手順

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製造部門や研究開発部門において、品質と信頼性の確保は事業競争力を左右する重要な要素である。市場投入後に不具合が発覚すると、顧客満足度の低下だけでなく、手戻りや回収対応など大きなコストと時間を伴う。

そのため近年は、問題が顕在化してから対処するのではなく、設計や工程の段階で潜在的なリスクを洗い出し、未然に防ぐ取り組みが重視されている。

こうしたリスク分析の代表的な手法がFMEAである。FMEA(故障モード影響解析)では、製品や部品、工程に潜む故障の可能性を体系的に整理し、優先的に対策すべきポイントを明確にできる。

本記事ではFMEAとは何かという基本概念から、種類やメリット、実務で活用するための具体的な進め方までを解説する。

FMEA(故障モード影響解析)とは?

FMEAとは「Failure Mode and Effects Analysis」の略称であり、製品や部品、製造工程などに潜む潜在的な故障や不具合のリスクを事前に洗い出し、影響度や発生頻度、検出の難しさといった観点から評価し、優先的に対策を講じるための体系的な分析手法である。日本語では「故障モード影響解析」と呼ばれる。

起源は1940年代後半から1950年代にかけて米軍の兵器システムの信頼性向上を目的に導入された手法とされ、その後は航空宇宙産業や自動車産業など高い安全性が求められる分野で発展してきた。

現在では自動車産業の品質マネジメント規格であるIATF 16949において重要な品質管理ツールの一つとして位置づけられており、製造業の品質保証活動に広く活用されている。さらに近年では医療機器やITサービス、事業開発など幅広い分野でもリスク管理手法として利用されている。

FMEAとFTAの違い

FMEAとFTAはいずれも製品やシステムの信頼性や安全性を高めるための分析手法だが、分析の出発点と進め方が大きく異なる。

FMEAは製品や工程を構成する部品や機能に着目し、そこに潜む故障モードを洗い出したうえで、それがシステム全体にどのような影響を与えるかを評価していく方法である。個々の要素から全体への影響を検討していくため、ボトムアップ型の分析と呼ばれる。

一方、FTAは重大事故やシステム停止など発生させてはならない特定の事象を起点とし、その事象が起きる原因を段階的に分解していく手法である。フォールトツリーと呼ばれる樹形図を用いて論理関係を整理し、複数の原因がどのように組み合わさって問題が発生するのかを明確にする。

このようにFMEAは潜在的な故障の網羅的な抽出に適し、FTAは特定の重大故障の原因構造を分析する際に有効である。

項目FMEA
(故障モード影響解析)
FTA
(故障の木解析)
考え方起こりうる故障モードを洗い出して影響を評価する起きてほしくない事象から原因をさかのぼって分析する
分析の向きボトムアップ(原因 → 影響)トップダウン(結果 → 原因)
主な目的不具合の未然防止重大事故や不具合の原因特定
向いている場面設計段階・工程設計段階でのリスク洗い出し特定の重大トラブルや事故の要因分析
特徴網羅的にリスクを確認しやすい因果関係を論理的に深掘りしやすい

FMEAの種類

FMEAは、対象とする段階によって「設計FMEA(D-FMEA)」と「工程FMEA(P-FMEA)」の2つに大別される。

設計FMEA(D-FMEA)

設計FMEAとは、「製品やシステムの設計段階における潜在的な故障モード」を体系的に洗い出し、その影響や原因を分析することで設計上のリスクを低減する手法である。

製品の開発では、量産開始後や市場投入後に不具合が発覚すると、設計変更や部品交換、回収対応などに多大なコストと時間が発生する可能性がある。設計FMEAはこうした手戻りを未然に防ぐことを目的とし、構想設計や詳細設計の段階で機能や部品ごとに故障の可能性を検討する。

例えば、特定の部品が破損した場合に製品全体へどのような影響が及ぶか、どのような条件で不具合が発生する可能性があるかなどを分析することで、設計の弱点を早期に把握できる。その結果、設計段階で改良や予防策を講じることが可能となり、製品の信頼性や安全性の向上につながる。

工程FMEA(P-FMEA)

工程FMEAとは、「生産やサービス提供のプロセスに潜むリスク」を体系的に分析し、問題の発生を未然に防ぐことを目的とした手法である。製造工程や作業手順を細かく分解し、それぞれの工程でどのような故障モードが起こり得るかを洗い出したうえで、その影響や原因を評価する。

分析では、人、設備、作業手順、材料、測定・検査方法、作業環境といったプロセスを構成する要素に着目し、どの段階で不具合が発生する可能性があるのか、またそれが品質や安全性、顧客満足にどのような影響を及ぼすのかを整理する。

例えば、作業ミスや設備不良、検査漏れなどのリスクを事前に特定することで、工程設計の見直しや管理方法の改善につなげることができる。これにより、品質のばらつきや不良品の発生を抑制し、安定した生産体制の構築に寄与する。

FMEAの評価項目と方法

FMEAには大きく3つの評価項目が存在し、それぞれ1〜10の数値で評価する。また、RPN(Risk Priority Number、リスク優先度数)の算出方法も紹介したい。

重大度・影響度(Severity: S)

重大度・影響度とは、故障モードが発生した場合に顧客や最終製品、安全性、法規制などへ、どの程度深刻な影響を及ぼすかを評価する指標である。

FMEAではSeverityと呼ばれ、数値スケール(一般的に1〜10)を用いて影響の大きさを段階的に評価する。数値が高いほど影響は重大であり、製品機能の喪失や安全事故、法令違反などにつながる可能性があることを意味する。

例えば、自動車部品であれば機能低下による快適性の問題と、人命に関わる安全装置の故障では影響の深刻度が大きく異なるため、それぞれ異なる評価が与えられる。この指標の重要な点は、発生の可能性とは切り離して純粋に影響の深刻さを評価することである。

重大度が高い問題は、発生確率が低くても見過ごすことができないため、設計や工程の見直しなど優先的な対策が求められる。

発生頻度(Occurrence: O)

発生頻度とは、特定の故障モードの原因が設計寿命内や製造プロセスの中でどの程度の確率で発生する可能性があるかを評価する指標である。

FMEAではOccurrenceと呼ばれ、通常は段階的な数値尺度によって発生の可能性を定量的に表す。数値が高いほど故障原因が発生しやすいことを示し、設計や工程の見直しが必要なリスクであることを意味する。

評価は主観だけで決めるのではなく、過去の類似製品における不具合履歴、試験データ、品質記録、設計レビューの結果など、客観的な情報をもとに判断することが重要である。例えば、同種の部品で過去に繰り返し不具合が発生している場合や、製造条件が不安定でばらつきが大きい工程では、発生頻度は高く評価される傾向がある。

このように発生頻度を数値化することで、潜在的なリスクの大きさを客観的に把握し、優先的に改善すべき工程や設計のポイントを明確にすることができる。

検出難易度(Detection: D)

検出難易度とは、製品設計や製造工程の初期段階において、現在の検査方法や管理手法によって潜在的な故障原因や不具合をどの程度発見できるかを評価する指標である。

FMEAではDetectionと呼ばれ、一般的な数値スケールによって検出の容易さを段階的に評価する。数値が高いほど不具合を事前に発見することが難しい状態を示し、現行の検査体制では問題を見逃す可能性が高いことを意味する。

例えば、目視検査では確認できない内部欠陥や、特定条件でのみ発生する不具合などは検出が困難と評価されやすい。この指標を評価する目的は、単に検査能力を確認することではなく、発見が難しいリスクを明確にし、検査方法の改善や工程管理の強化につなげる点にある。

さらに、検査に依存する対策だけでなく、そもそも不具合が発生しない設計や工程へと改善する予防的な取り組みを促進する役割も担っている。

RPNの算出

RPNとはRisk Priority Numberの略称であり、FMEAにおいて潜在的なリスクの優先度を数値で示す指標である。リスク優先度数とも呼ばれ、分析対象となる故障モードごとに評価値を設定し、それらを掛け合わせることで算出される。

一般的な算出式
RPN = 重大度(S)× 発生頻度(O)× 検出難易度(D)

一般的には各評価項目を1から10までの段階で数値化し、その積によってリスクの大きさを定量的に比較する仕組みである。算出された数値が高いほど、製品や工程に与える影響が大きく、早急な改善や対策が必要なリスクであると判断される。

この指標の目的は、潜在的な問題を体系的に整理し、数多くのリスクの中から優先的に対応すべき項目を明確にする点にある。例えば、複数の不具合要因が存在する場合でも、数値によってリスクの大きさを比較できるため、限られた時間や資源の中で効果的な改善活動を進めることが可能となる。

さらに対策を実施した後は再評価を行い、数値の変化を確認することで改善効果を客観的に把握できる。

FMEAを導入するメリット

FMEAを導入するメリットは、以下の5つが挙げられる。

重大なクレームや事故の防止

FMEAを導入する1つ目のメリットは、重大なクレームや事故を市場投入前の段階で防止できる点にある。

製品やサービスに不具合が残ったまま市場に出てしまうと、顧客からの重大クレームや安全事故につながる可能性があり、企業のブランド価値や社会的信頼を大きく損なう。さらに、製品回収や補償対応、法的対応などが発生すれば、企業にとって大きな経済的負担となる。

FMEAでは、潜在的な故障モードを洗い出したうえで、それが顧客や社会へどのような影響を与えるかを体系的に評価することで、安全性に関わる不具合や法規制に抵触する可能性のある問題を早期に把握できる。さらに、影響の大きさや発生の可能性などを総合的に検討することで、特に重大なリスクへ優先的に対策を講じることが可能となる。

その結果、重大事故や深刻なクレームの発生を未然に防ぐ体制を構築できる。

リスクの見える化

FMEAを導入する2つ目のメリットは、潜在的なリスクを可視化できる点がある。

製品や工程に潜む不具合の可能性を洗い出し、影響の大きさや発生の可能性、検出の難しさといった共通の評価軸を用いて数値化することで、感覚や経験だけに依存しない客観的なリスク評価が可能となる。

その結果、どの故障モードが事業や品質に大きな影響を及ぼす可能性があるのかを体系的に整理でき、対策の優先順位を明確にすることができる。例えば、同時に複数の潜在的な不具合が存在する場合でも、数値評価によって重要度を比較できるため、限られた時間や資源を効果的に配分できるようになる。

また、リスクが整理された形で共有されることで、議論が感覚論や責任の押し付け合いに陥ることを防ぎ、客観的な根拠に基づいた判断が可能となる。結果として、組織として合理的にリスクへ向き合う基盤が整う。

技術やナレッジの蓄積

FMEAを導入する3つ目のメリットは、技術やナレッジを組織として蓄積できる点にある。FMEAは単なる不具合リストではなく、故障モード、影響、原因、対策といった情報を体系的に整理する仕組みであるため、製品開発や工程設計の過程で得られた知見を構造的に記録することができる。

多くの企業では、設計者や現場担当者の経験や勘に基づく知識が個人の中に留まり、形式知として残らないケースも少なくない。しかしFMEAの分析結果をデータベースや管理ツールとして蓄積すれば、どのような条件で故障が発生したのか、どの対策が有効であったのかといった技術的な知見を再利用できるようになる。

これにより、新しい製品開発や工程設計の際にも過去の経験を参照しながら判断でき、同じ失敗を繰り返さない仕組みづくりにつながる。結果として、組織全体の技術力と意思決定の質を継続的に高めることが可能となる。

部門間の連携強化

FMEAを導入する4つ目のメリットは、部門間の連携が強化される点にある。FMEAの分析は特定の部署だけで完結するものではなく、設計、製造、品質管理、調達など複数の部門が参加し、製品や工程に潜むリスクについて多角的に議論しながら進める必要がある。

それぞれの部門は異なる視点や専門知識を持っているため、共同で分析を行うことで、単一の部署では気づきにくい問題や改善点を発見できるようになる。例えば設計部門は機能や構造の観点から、製造部門は加工や作業工程の観点から、品質部門は検査や品質保証の観点から意見を出し合うことで、より実効性の高い対策を検討できる。

このような議論の積み重ねにより、部署ごとに分断されがちだった情報や考え方が共有され、相互理解が深まる。結果として、組織全体で品質や安全性を高めていくための協働体制が構築される。

開発や生産コストや工数の最適化

FMEAを導入する最後のメリットは、開発や生産にかかるコストや工数を最適化できる点にある。一般的に製品開発や工程設計では、プロジェクトが後工程へ進むほど設計変更や不具合修正に伴う負担が大きくなる傾向がある。

量産直前や市場投入後に問題が発覚すると、設計の再検討や部品の変更、生産ラインの停止といった対応が必要になり、時間と費用の両面で大きな損失を招く可能性がある。FMEAでは、開発初期の段階で潜在的な故障モードやその原因、影響を体系的に分析し、優先度の高いリスクから対策を講じることができる。

その結果、後工程で発生する手戻りや追加作業を大幅に減らすことが可能となる。早期に問題の芽を摘むことで、開発プロセス全体の効率が向上し、限られた資源をより価値の高い活動へ集中させることにつながる。

FMEAが形骸化・失敗する原因

FMEAは設計や工程における潜在的なリスクを事前に特定・軽減する強力なフレームワークだが、使い方を誤ると形骸化したり、適切な分析・評価ができなかったりする事態に陥ってしまう。ここでは、FMEAが形骸化・失敗する原因について解説する。

作成することがゴールになる

FMEAが形骸化してしまう原因の一つに、分析を実施することではなく帳票を作成すること自体が目的になってしまう点がある。FMEAは「ISO9001」や「IATF16949」といった品質マネジメントシステムの要求事項として導入されるケースが多く、その結果、認証取得や顧客提出のための書類として扱われてしまうことが少なくない。

このような状況では、現場の実態や実際のリスクを十分に検討しないまま形式的に表を埋める作業となり、本来の分析活動として機能しなくなる。例えば、過去の資料を流用して更新するだけで議論が行われない場合や、実際の工程変更や設計変更が反映されない場合などが典型的な例である。

本来のFMEAは、潜在的な故障モードを議論しながらリスクを洗い出し、優先的に対策を講じるためのツールである。作成そのものが目的化してしまうと、重要なリスクの発見や改善活動につながらず、分析の価値が失われてしまう。

評価基準や評価項目の粒度が統一されていない

また、FMEAが形骸化する原因として、評価基準や評価項目の粒度がチーム内で統一されていないことも挙げられる。影響度や発生の可能性、検出の難しさといった評価尺度が共有されていない場合、メンバーごとに判断基準が異なり、同じリスクに対しても評価が大きくばらつく可能性がある。

その結果、リスクの優先順位付けが恣意的になり、本来優先すべき問題が見過ごされたり、逆に重要度の低い項目が過度に重視されたりする恐れがある。さらに、市場クレームや試験結果などの客観的データを活用せず、個人の経験や感覚だけで評価を行うと、リスクの大きさを正確に把握できなくなる。

特に、特定の部門だけで分析を進めると視点が偏りやすく、製造や品質保証、保守などの現場で想定される問題が十分に反映されない場合もある。多様な専門知識を持つメンバーが共通の評価基準をもとに議論することが、実効性の高い分析には不可欠である。

対策が実施・評価されない

そして、分析結果をもとにした対策が実際に実施されない、あるいは実施後の評価が行われないこともFMEAが形骸化する原因である。

分析によってリスクの優先順位が明確になっても、具体的な改善アクションが現場で実行されなければ、潜在的な不具合は依然として残り続ける。また、対策を講じたとしても、その効果を検証しなければリスクが本当に低減されたかを判断することはできない。

FMEAは一度作成して終わる文書ではなく、開発や生産の過程で得られるデータ、不具合情報、運用上の知見などを反映しながら継続的に更新していく活動である。最初に設定した評価はあくまで予測に基づくものであり、実際の結果と照らし合わせて見直すことが不可欠である。

もし対策後の確認や再評価を行わなければ、分析は単なる形式的な記録となり、問題が製品化直前や市場投入後に表面化するリスクを高めてしまう。

故障原因の掘り下げ不足

最後に、故障原因の掘り下げが不十分なまま分析が進められてしまう場合もFMEAの形骸化を進めてしまう要因となってしまう。例えば、不具合の原因を作業ミスや部品不良といった表面的な要因で止めてしまうと、根本的な問題が特定できず、有効な対策につながらない。

実際には、その背後に設計上の弱点や工程条件の不備、作業手順の不明確さなど複数の要因が存在することが多い。そのため、分析では設計、生産技術、品質保証など複数の部門が連携し、過去の不具合事例や試験データを参考にしながら原因を体系的に掘り下げることが重要となる。

具体的には、なぜその問題が起きたのかを段階的に問い直す「なぜなぜ分析」などを用い、真の原因に到達するまで検討を続ける必要がある。また、原因の仮説が感覚的な推測ではなく、客観的な事実やデータに基づいているかを確認することも不可欠である。

FMEAのやり方・実施手順

最後に、FMEAのやり方について、7つのステップにわけて解説する。

対象となる製品やシステムを洗い出す(範囲の明確化)

ステップ1は、まず分析対象となる製品やシステムの範囲を明確に定義することから始める必要がある。特に新規事業や研究開発の初期段階では、製品の全体構成や機能の分担、外部システムとの関係性が十分に整理されていない場合が多く、そのまま分析を進めると対象が曖昧になり、重要な要素を見落とす可能性がある。

そのため、まず製品を構成する部品や機能、サブシステムを整理し、どこまでを分析対象とするのかを明確にすることが重要だ。具体的には、製品構造をツリー図やブロック図として可視化し、各要素の役割や相互関係、外部システムとのインターフェースを整理する方法が有効である。

また、分析の目的や対象工程、使用環境などもあわせて定義しておくことで、関係者間で共通認識を持つことができる。

故障モードの抽出と影響の分析

ステップ2は、故障モードの抽出と影響の分析工程である。ここでは、システムや製品を構成する各要素が本来果たすべき機能を整理し、その機能が正常に働かない状態や、意図しない動作を引き起こす状態を故障モードとして洗い出していく。

例えば、部品が動作しない、性能が低下する、異常な信号を出すといった状態が該当する。次に、それぞれの故障が発生した場合に、利用者やシステム全体へどのような影響を及ぼすのかを具体的に想定する。機能停止によるサービス停止や品質低下、安全性への影響などを多角的に検討することが重要である。

同時に、その故障がなぜ起こるのかという原因についても、物理的な故障要因や論理的な設計上の問題などの観点から掘り下げて考察する。この段階で可能な限り多くの故障パターンと影響を整理しておくことで、後続の分析の精度を高めることができる。

故障原因の特定と発生頻度の評価

ステップ3は、故障原因の特定と発生頻度の評価だ。ここでは、抽出された故障モードがどのような要因によって発生するのかを具体的に分析し、その発生可能性を数値スケール(1から10)で定量的に評価する。

故障原因には設計ミス、部品の摩耗、操作ミス、工程条件のばらつきなど様々な要素が存在するため、原因を体系的に整理することが重要である。製造業や設計現場では、原因分析の視点として5M1Eが広く用いられる。これは人、設備、材料、作業方法、測定・検査、作業環境といった観点から原因を分類する考え方であり、問題の見落としを防ぐのに有効である。

分類内容
Man(人)ヒューマンエラー
Machine(機械・設備)物理的要因
Material(材料)原材料要因
Method(方法)手順・プロセス要因
Measurement(測定)検査・確認要因
Environment(環境)外部環境要因

こうして整理した原因ごとに、故障が発生する可能性を評価し、FMEAの評価基準に基づいて発生頻度を数値化する。評価は過去の不具合履歴、試験データ、品質記録などの客観的な情報を参考に行うことが望ましい。

現行管理方法と検出度の評価

ステップ4の現行管理方法と検出度の評価では、故障や不具合が発生した場合に、現在の管理体制や検査手順によって問題をどの程度発見できるかを検討する。

まず、製品開発や製造工程において実施されている検査方法、監視体制、品質管理手順などを整理し、それらが故障の兆候や不具合をどの段階で検出できるのかを確認する。例えば、工程内検査、完成品検査、センサーによる監視、ソフトウェアの異常検知などが該当する。

そのうえで、FMEAの評価基準に基づき検出難易度を数値化する。一般的には1から10のスコアで評価し、1に近いほど現行の管理方法で容易に問題を発見できる状態を示し、10に近いほど検査や監視によっても発見が極めて困難な状況を意味する。

リスク評価(RPNの算出)

ステップ5のリスク評価では、各故障モードについて設定した評価値をもとにRPNを算出し、対策の優先順位を整理する。一般的には重大度、発生頻度、検出難易度の三つの評価値を掛け合わせて数値化し、その値が高い項目ほど優先的に対策すべきリスクとして扱う。

これにより、多数の潜在リスクの中から、限られた時間や人員をどこへ集中させるべきかを判断しやすくなる。ただし、RPNはあくまで優先順位付けを支援する指標であり、数値だけで機械的に判断してよいわけではない。

特に重大度が高い項目は注意が必要である。人命への影響、法規制違反、リコール、操業停止などにつながるおそれがある場合は、他の評価値との組み合わせでRPNが相対的に低く見えても、実務上は最優先で対策すべき対象となる。したがって、RPNの大小だけでなく、故障がもたらす影響の質も含めて総合的に判断することが重要である。

対策の立案と実施

そして、ステップ6の対策の立案と実施では、評価結果をもとに優先度の高いリスクから具体的な改善策を検討し、実際の開発や生産プロセスへ反映していく。リスクが大きい項目ほど影響範囲が広いため、設計変更、工程条件の見直し、検査方法の強化など、問題の発生を防ぐための実効性の高い対策を検討する必要がある。

重要なのは、対策を単なるアイデアや検討事項で終わらせず、実行可能な計画として具体化することである。そのためには、誰が担当するのか、いつまでに実施するのか、どのような内容の対策を行うのかといった責任と期限を明確に定義することが重要となる。

また、現場で実行できる現実的な方法かどうか、品質や安全性にどのような影響を与えるかといった点も検証しながら進める必要がある。

再評価

最後の再評価では、実施した対策がリスク低減にどの程度効果を発揮しているのかを確認するため、評価値を再度見直して数値の変化を確認する。

具体的には、改善後の工程データや試験結果、実際の運用状況などをもとに再スコアリングを行い、リスクが許容できる水準まで低減されたかを客観的に判断することが重要である。この際、対策を実施したから自動的に評価値を下げるといった思い込みに基づく判断は避けなければならない。

実際のデータや検証結果に基づいて評価することで、対策の実効性を正確に把握できる。また、現場で発生した不具合や運用上の課題を起点に分析を見直す逆FMEAを活用すると、机上で作成した分析の妥当性を検証することができる。

この再評価を通じて、分析内容を継続的に更新し、実際の状況に即したリスク管理を維持することが可能となる。

まとめ

FMEAは設計や工程に潜むリスクを構造的に洗い出し、対策を講じるためのリスクマネジメントツールだ。設計FMEAや工程FMEAといった種類ごとの特性を理解し、正しい手順に沿って運用することで、重大な不具合や事故の防止、手戻りの削減、品質の安定化といった具体的な成果につながる。

分析や評価で終わりにせず、議論を通じてリスクを深く理解し、その結果を次の開発や改善へとつなげることではじめて、真の効用が得られるだろう。

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