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2026.01.07 #製造業 New!

全固体電池の実用化に向けたトヨタの取り組みはどこまで進んでいる?

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電動化が加速する自動車産業において、次世代電池として注目される全固体電池は、航続距離や安全性、充電性能を大きく左右する中核技術である。

その中でもトヨタは、基礎研究から量産を見据えた体制構築まで一貫して取り組んできた数少ないメーカーだ。一方で、実用化の時期や技術的な到達点、協業先との役割分担については断片的な情報しか知られていないのが実情である。

本記事では、全固体電池を巡るトヨタの開発戦略や協業の動き、実用化に向けた現在地を整理して解説する。

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全固体電池の開発に関するトヨタの取り組み

トヨタは全固体電池の実用化に向け、材料開発から量産体制の構築、国の支援を受けた計画認定まで段階的に取り組みを進めている。

出光興産と全固体電池量産に向けた協業を開始(2023年10月)

2023年10月、トヨタは全固体電池の量産化とサプライチェーン構築に向け、出光興産との協業を発表した。両社の連携は新しいものではなく、2013年から共同研究を継続してきた実績がある。

出光興産は2001年から硫化物系固体電解質の研究を進め、トヨタも2006年以降、全固体電池の要素技術開発に取り組んできた。特許面でもトヨタは数千件規模の関連出願を行い、出光興産も固体電解質を中心に数百件の特許を保有するなど、両社は世界有数の技術基盤を持つ。

今回の協業では、材料製造技術を担う出光興産と、電池加工や量産技術を有するトヨタが役割を分担し、硫化物系全固体電池の材料開発から量産までを一体で推進できる体制を構築した点が大きな特徴である。

車載用電池の量産体制強化に向けた取り組みが本格化(2024年3月)

トヨタは2024年3月、車載用電池の量産体制を強化するため、パナソニックの子会社であったプライムアースEVエナジー(現:トヨタバッテリー株式会社)を完全子会社化した。

同社はもともとEVやハイブリッド車向け蓄電池の開発を目的に設立され、設立当初からトヨタ自動車が40%を出資していた。その後、2005年に出資比率を60%へ引き上げ、2010年には80.5%まで増資するなど、段階的に関与を強めてきた経緯がある。

完全子会社化を経て、2024年10月には社名をトヨタバッテリー株式会社へ変更し、電池開発から生産までの意思決定を一体化した。これにより、EV用電池の需要拡大に迅速に対応できる体制が整い、将来の全固体電池を含む次世代車載電池の量産化に向けた基盤強化と国際競争力の向上が図られている。

経済産業省がトヨタの全固体電池計画を認定(2024年9月)

2024年9月、トヨタ自動車の全固体電池に関する計画は、経済産業省の「蓄電池に係る供給確保計画」として認定を受けた。

本計画では、2026年から段階的に生産を開始し、2030年の本格量産を目標としている。合計3件の計画を合わせた生産規模は年間9GWhを想定し、国内での安定供給体制の構築を重視する内容である。

認定により、設備投資の一部に対する補助金の交付を受けられるほか、製造ライン整備や原材料の安定調達、国内サプライチェーンの強化といった制度的支援が可能となった。これにより、量産化の障壁であったコスト負担や投資リスクが大幅に軽減され、全固体電池の商用化が現実的な段階へと進みつつある。

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正極材量産に向けて住友金属鉱山と協業(2025年10月)

2025年10月、住友金属鉱山とトヨタは、BEVに搭載する全固体電池向け正極材の量産に向けた共同開発契約を締結した。両社は2021年頃から正極材を共同研究しており、充放電の繰り返しで生じる正極材の劣化が課題であった。

そこで住友金属鉱山の独自の粉体合成技術を活用し、全固体電池に適した耐久性に優れた正極材を新たに開発した。住友金属鉱山は電動車向け正極材を20年以上供給してきた知見を生かし、新正極材の供給と量産化を目指す。

トヨタは全固体電池の実用化時期を2027~2028年としており、本協業で性能・品質・安全性の向上やコスト低減を進める。

トヨタと全固体電池の共同開発を行っている企業

全固体電池の実用化に向け、トヨタは材料、製造、量産技術の各領域で強みをもつ企業と連携を深めている。ここでは、トヨタと共同開発を進める中核パートナーとして、重要な役割を担う3社を紹介する。

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出光興産

出光興産は、石油精製や石油化学を基盤とする総合エネルギー企業であり、全固体電池では材料分野を担う中核的な存在である。

トヨタとは2013年から共同研究を進め、2023年10月に量産化を見据えた協業を正式に発表した。同社は硫黄を原料とする硫化物系固体電解質の研究を1990年代から継続しており、2027~2028年の実用化を目標に、千葉事業所内で年数百トン規模の大型パイロット装置の基本設計を開始している。

この装置で製造される固体電解質は、トヨタが開発するEV向け全固体電池に使用される計画である。段階的な設備スケールアップを通じて量産技術を確立し、原料から製品まで一貫したサプライチェーンの構築を進めることで、全固体電池の社会実装を材料面から支えている。

住友金属鉱山

住友金属鉱山は、非鉄金属資源の開発から材料製造までを手がける総合素材メーカーであり、車載電池向け正極材では20年以上の供給実績を持つ。トヨタとは全固体電池の実用化を見据え、2021年頃から正極材の共同研究を進めてきた。

全固体電池は高出力や長寿命といった特性を持つ一方、充放電の繰り返しによる正極材の劣化が課題であった。両社はこの課題に対し、住友金属鉱山の独自の粉体合成技術を活用し、全固体電池に適した耐久性の高い正極材を新たに開発した。

今後は同社が培ってきた量産技術と品質管理の知見を生かし、正極材の安定供給と量産化を目指す。トヨタは2027~2028年の実用化を掲げており、本協業は全固体電池の性能向上、品質確保、コスト低減を支える重要な役割を担っている。

パナソニック(プライムプラネットエナジー&ソリューションズ)

プライムプラネットエナジー&ソリューションズは、トヨタ自動車とパナソニックが2020年に設立した車載用電池の合弁会社であり、EVやハイブリッド車向け電池の開発・製造を担う中核企業である。本社は東京都中央区に置かれ、両社の電池技術と量産ノウハウを融合させた事業体制を構築している。

全固体電池分野においては、トヨタが蓄積してきた要素技術や特許群を実用化へつなぐ役割を担い、セル設計、製造プロセス、品質管理といった量産技術の確立を主導している点が特徴だ。液系電池で培った生産技術や車載品質基準への対応力を活かし、将来的な全固体電池の安定供給体制を見据えた開発を進めている。

材料メーカーや装置メーカーとの連携拠点としての役割も果たし、全固体電池の商用化を現実の製造技術へ落とし込む要となる存在である。

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トヨタが開発する全固体電池の実用化はいつ?

トヨタが開発する全固体電池の実用化時期について、同社は一貫して2027~2028年頃の車載実用化を目標としている。

これは研究段階にとどまらず、実際に電気自動車へ搭載し、市場投入することを前提としたスケジュールである。現在は基礎研究の段階を越え、材料開発、セル設計、量産プロセスの確立といった実用化直前のフェーズに入っている。

特に、固体電解質や正極材の量産技術、製造ラインの構築が重要な課題とされ、協業先企業とともに段階的な生産体制の整備が進められている。さらに、2026年頃からはパイロットラインでの試作・検証を経て、2030年には本格量産へ移行する計画が示されている。

これにより、航続距離の大幅な向上や急速充電性能の改善を実現する次世代EVの投入が現実味を帯びてきており、トヨタは全固体電池を将来の電動化戦略の中核技術と位置付けている。

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全固体電池の開発におけるトヨタ以外のメーカー動向は?

全固体電池の開発はトヨタだけでなく、世界各国の自動車・電池メーカーが競争的に取り組んでいる。ここでは、日本、中国、欧州それぞれの代表的な動きを3つ紹介する。

日産、ホンダなど日本メーカーによる全固体電池開発の現状

自動車メーカーでは、日産自動車がEV時代の競争力強化を目的に全固体電池を次世代中核技術と位置付け、2025年1月からパイロット生産ラインを稼働させ、2028年度の車両搭載を目標に開発を進めている。

また、ホンダもカーボンニュートラル実現に向けた重要技術として研究開発を継続しており、将来の量産化を見据えた基盤技術の確立に注力している。

電池分野ではパナソニックホールディングスが産業機械やロボット用途を想定し、2026年度のサンプル出荷を計画するなど用途の多様化が進む。さらに三井金属工業、AGC、TDKなどの素材・部品メーカーにおいても、固体電解質や正極材の開発・量産化を担い、政府の支援も受けながら国内製造基盤の強化が進展している。

CATLとの連携を軸に進む中国メーカーの猛追

中国では国家主導の支援のもと、全固体電池の実用化に向けた開発競争が急速に進んでいる。車載電池最大手のCATLは、中国福建省に本社を置く世界最大級の電池メーカーであり、EV用リチウムイオン電池で培った量産力と資本力を背景に、全固体電池を将来の中核技術と位置付けている。

数百億円規模の研究開発投資と1000人規模の開発体制を構築し、2020年代後半に小規模生産、2030年前後の本格量産を視野に入れる。BYDや広州汽車集団、上海汽車集団などの自動車メーカーもCATLとの連携を強め、早期の車両搭載を計画している。

さらに国家標準の整備や半固体電池での実績積み上げを通じ、材料開発から量産、規格化までを一体で進める体制が整いつつあり、中国勢の追い上げは極めて強力である。

欧州4カ国9社が参画するTALISSMANの発足

欧州では、次世代電池の自立的な供給網構築を目的に、Horizon Europeの枠組みでTALISSMANプロジェクトが始動した。2025年7月に発足し、スペインの電池研究拠点CIDETECを中核に、エアバス、独フラウンホーファー研究機構、仏サフトなど4カ国9組織が参画する産官学連携である。

主眼は高エネルギー密度と安全性を両立するリチウム硫黄電池の実用化であり、準固体から全固体電解質の適用を段階的に進める。2027年に準固体ハイブリッド概念を確立し、2030年までに全固体硫化物方式の完成を目指すロードマップを掲げ、航空宇宙や重量輸送など高負荷用途を視野に欧州の産業競争力を支える基盤構築を進めている。

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まとめ

トヨタは全固体電池の実用化に向け、材料開発から量産体制構築までを見据えた取り組みを段階的に進めている。出光興産や住友金属鉱山との協業により、固体電解質や正極材といった中核材料の量産技術を強化し、電池サプライチェーンの内製化を進展させてきた。

さらに、車載電池事業の再編や政府認定による支援を受け、投資リスクを抑えながら商用化の現実性を高めている。2027〜2028年の実用化、2030年前後の本格量産を視野に、トヨタの全固体電池開発は研究段階から事業化フェーズへ確実に移行しつつある。

全固体電池の解説資料

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