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新素材(新しい素材・先端素材)の種類一覧|特徴や開発事例について

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製造業の競争環境は、設計力やソフトウェアの最適化だけでは差別化が困難な段階に入りつつある。その中で注目されているのが、新素材や先端素材と呼ばれる材料技術である。

カーボンニュートラルへの対応、高周波通信の高度化、宇宙・航空分野の拡張といった要請は、従来素材の延長では限界があり、素材そのものの刷新が不可欠となっている。こうした背景から、新しい素材の特性や適用分野を正確に把握することは、事業戦略や研究開発の意思決定に直結する。

本記事では、新素材とは何かという基本整理から、新素材一覧として押さえるべき種類、その特徴、実際の開発事例までを解説する。

新素材(新しい素材)とは何か?

新素材とは、従来の金属やプラスチック、セラミックスといった材料では実現できなかった性質や機能を備えた材料の総称である。こうした素材は、微細構造の制御や新しい化学組成の設計により、軽量でありながら高い強度を持つ、極めて優れた導電性や耐熱性を示すなど、既存材料の物性限界を超える点が特徴だ。

AI技術の急速な進展により、産業や社会は高度化・複雑化しており、自動車や航空機では軽量化と安全性の両立、エレクトロニクス分野では小型化と高性能化、エネルギー分野では高効率化と長寿命化が強く求められている。こうした要求は、従来材料の改良では対応しきれず、新素材の活用が不可欠となっている。

さらに、環境負荷低減や持続可能性への関心の高まりも、新素材開発を後押ししている。省エネルギー性に優れる材料や、リサイクル性の高い材料、バイオ由来素材の研究開発は、カーボンニュートラルの実現に直結する重要な技術領域として、世界規模で加速している。

新素材の市場規模について

新素材の市場規模は、明確な定義が存在しないものの、先端機能材料市場を中心に見ることで全体像を把握できる。例えば、360iResearchの調査によれば、先端機能材料市場は2024年に約1,150億9,000万米ドル、2025年に約1,255億4,000万米ドルへ拡大し、2032年には約2,303億3,000万米ドルに達すると予測されている。

別の推計でも、2024年時点の市場規模は約1,066億〜1,516億ドルとされ、年平均成長率は5〜9%前後で推移すると見込まれている。成長を牽引しているのは、AI向け先端半導体材料やEV普及に伴う電池材料であり、特に半導体材料は2032年に約962億ドル規模まで拡大する可能性が示されている。

地域別ではアジア太平洋が需要の約半分を占め、日本国内でも電子材料市場は約2.8兆円に達する。一方で、地政学的リスクや重要資源の供給不安によるコスト上昇が市場の不確実性要因となっており、成長と課題が同時に進行する段階にある。

新素材の種類一覧

ここでは、代表的な新素材を種類ごとに解説していく。

ナノ材料(セルロースナノファイバーなど)

ナノ材料とは、一般に1〜100ナノメートルの範囲で、少なくとも一つの次元が制御された構造を持つ材料を指す。サイズが原子や分子に近づくことで、同一の化学組成であっても、強度、導電性、触媒活性、光学特性などが大きく変化する点が最大の特徴である。

例えば、セルロースナノファイバーは、植物由来の繊維をナノレベルまで解繊した材料で、鋼鉄に匹敵する強度と極めて軽量な特性を併せ持ち、輸送機器や包装材の軽量化に寄与している。また、原子数層の薄さを持つ二次元材料であるMXeneは、金属並みの高い導電性と親水性を同時に備え、次世代蓄電デバイスや高速通信向け電磁波遮蔽材として実用化が進む。

他にも、2025年にノーベル化学賞を受賞した金属有機構造体(MOF/PCP)はナノサイズの規則的な孔を持ち、特定分子を選択的に吸着できるため、二酸化炭素回収や水素貯蔵など環境・エネルギー分野で重要性を高めている。ナノ材料は単なる微細化技術ではなく、社会課題を解決する機能性素材として位置づけられている。

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)

CFRPとは、炭素繊維をエポキシ樹脂などのマトリックス樹脂に含浸させ、加熱・硬化することで成形される繊維強化複合材料である。最大の特徴は、鉄やアルミニウムと比べて大幅に軽量でありながら、極めて高い強度と剛性を持つ点にある。

特に単位重量あたりの強さや硬さを示す比強度・比弾性率に優れ、構造部材の軽量化と高性能化を同時に実現できる。また、金属のように錆びることがなく、疲労や腐食に強いため、長期間にわたり安定した性能を維持できる点も注目されている。

こうした特性から、燃費向上や航続距離延長が求められる航空機や自動車分野をはじめ、競技用自転車やゴルフクラブなどのスポーツ用品、風力発電設備にまで用途が広がっている。ただし、一方で成形コストやリサイクル性といった課題も抱えており、量産技術や再利用技術の高度化が今後の普及拡大の鍵を握っている。

SiC(炭化ケイ素)・GaN(窒化ガリウム)

SiCとGaNは、次世代の電力・電子デバイスを支える代表的なワイドバンドギャップ半導体である。SiCはケイ素と炭素が強固な共有結合で結びついた化合物半導体で、従来のシリコンに比べて絶縁破壊電界が高く、耐熱性と熱伝導性に優れる。

このため、高電圧・大電流かつ高温環境でも安定した動作が可能となり、電力損失の低減に大きく貢献する。電気自動車のインバータや急速充電器、再生可能エネルギー向け電力変換装置では、システム全体の小型化と高効率化を実現する素材として採用が拡大している。

一方、GaNはガリウムと窒素からなる化合物半導体で、SiCと同様に広いバンドギャップを持ちながら、電子移動度が高い点が特徴だ。そのため、高速スイッチングや高周波動作に適しており、無線通信機器の増幅器や高周波電源、小型かつ高効率な電源アダプタで優れた性能を発揮する。

SiCが高耐圧・高電力用途、GaNが高周波・高速用途を担うことで、次世代エネルギー・通信インフラの中核材料となっている。

ペロブスカイト

ペロブスカイトとは、ABX₃型で表されるペロブスカイト構造と呼ばれる特有の結晶構造を持つ物質群の総称である。この構造は組成の自由度が高く、金属元素やハロゲン元素の組み合わせを変えることで、多様な物性を引き出せる点が特徴だ。

近年とくに注目されているのが、ペロブスカイト構造を持つ材料を発電層に用いたペロブスカイト太陽電池である。強い光吸収性と高い電荷キャリア移動性を兼ね備えており、数百ナノメートル程度の薄膜でも高い電力変換効率を実現できる。

研究段階では、単接合型でシリコン太陽電池に匹敵する効率が報告され、タンデム構造では既存技術を上回る性能も示されている。また、低温プロセスで製造できるため、印刷技術などを用いた低コスト生産や柔軟基板への適用が可能である点も大きな利点だ。

一方で、耐久性や環境安定性、原料に含まれる鉛の取り扱いなどが課題として残っており、実用化に向けた材料設計や封止技術の高度化が進められている。

バイオマテリアル(バイオベース・マテリアル)

バイオマテリアルとは、生物由来の原料や生体プロセスを活用して開発される材料の総称である。従来は人工関節やカテーテルなど、生体に直接用いられる医療用材料を指す概念であったが、近年は環境負荷低減や資源循環への関心の高まりを背景に、その範囲は大きく拡張している。

現在は、原料の起源に着目した「バイオベース・マテリアル」として語られることが多く、植物や微生物を原料とするバイオポリマーやバイオプラスチックが中核を担う。これらは石油由来プラスチックの代替として、脱炭素や資源制約への対応策として注目されている。

先端機能材料としてのバイオベース・マテリアルは、生物が持つ高度で規則的な分子構造を工業的に再現・制御することで、耐久性や機能性の面でも従来材料を上回り始めている。代表例であるPHBHは、微生物の発酵プロセスによって合成される生分解性ポリエステルで、海洋環境下でも分解が進む特性を持つ。

包装材や農業資材など屋外用途での実用化が進み、環境対応型素材として存在感を高めている。

人工クモの糸

人工クモの糸とは、自然界に存在するクモの糸が持つ優れた特性を人工的に再現した新素材である。クモの糸は、同重量の鋼鉄を上回る強靱性と高い伸縮性を併せ持ち、衝撃を効率よく吸収できる点が大きな特徴だ。

人工クモの糸は、クモの糸タンパク質の遺伝情報を解析し、その配列を基に微生物を遺伝子組み換えすることでタンパク質を大量生産し、これを紡糸して繊維化することで作られる。石油由来繊維と比べて軽量で柔軟性が高く、使用環境に応じた物性設計が可能な点も強みである。

このため、衣料や家具、アウトドア用品に加え、自動車や建築分野の衝撃吸収材、さらには医療用縫合糸など安全性と性能が同時に求められる用途で導入が進んでいる。量産技術やコスト低減が進めば、高機能繊維の新たな標準となる可能性を秘めた素材といえる。

ジオポリマー

ジオポリマーとは、従来のポルトランドセメントや一般的なコンクリートとは異なる結合原理で硬化する新しい無機ポリマー材料である。主にシリカやアルミナを多く含むアルミノシリケート系原料を、強アルカリ溶液と反応させることで三次元網目構造を形成し、高い強度と耐久性を発現する。

原料にはフライアッシュや高炉スラグ、メタカオリンなどの工業副産物や天然鉱物を利用できるため、廃棄物の有効活用と資源循環に寄与する点が大きな特徴だ。製造過程で石灰石の焼成を必要としないことから、二酸化炭素排出量を大幅に削減でき、環境負荷の低い建設材料として注目されている。

また、耐熱性や耐酸性、耐火性に優れており、高温環境や化学的腐食を受けやすいインフラ用途にも適している。一方で、原料品質のばらつきや施工条件の管理が難しい点が課題とされており、安定した品質確保と標準化に向けた技術開発が進められている。

蓄電コンクリート

蓄電コンクリートとは、建物やインフラの構造体そのものに電気を蓄える機能を持たせることを目的に開発されている先端素材である。通常のコンクリートは電気を通しにくい性質を持つが、カーボンブラックや炭素系フィラー、短繊維などを適切に混合することで導電性を付与し、内部に電極構造を形成できる点が特徴だ。

これにより、コンクリート自体がキャパシタのように機能し、電力を一時的に蓄えて放出することが可能となる。実用化が進めば、住宅の基礎や壁面、橋梁や道路といった既存インフラが分散型エネルギー貯蔵装置として機能し、再生可能エネルギーの地産地消を支える基盤となる。

従来型の大型蓄電池に比べて設置スペースを必要とせず、構造材と一体化できる点は大きな利点である。一方で、エネルギー密度の向上や長期耐久性、施工時の品質管理などが課題とされており、建築・電力の両分野を横断した技術開発が進められている。

スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)

スーパーエンジニアリングプラスチックとは、一般的なプラスチックでは対応できない過酷な環境下での使用を前提に設計された高性能樹脂の総称であり、スーパーエンプラとも呼ばれる。最大の特徴は卓越した耐熱性で、150℃を超える高温環境でも長時間にわたり物性を維持でき、種類によっては300℃以上の融点を持つものも存在する。

加えて、耐薬品性や難燃性、優れた電気絶縁性を備え、金属に近い剛性と寸法安定性を発揮する点が評価されている。これにより、金属部品の軽量化や部品点数削減を目的とした樹脂化が可能となり、自動車や航空機、電子機器の内部構造部材などで採用が拡大している。

成形加工性に優れる点も利点で、複雑形状の一体成形による設計自由度の向上や生産効率の改善に寄与する。一方で、原材料コストが高く加工条件も厳しいため、用途を見極めた適材適所での活用が求められる。

新素材の特徴

基本的な新素材の特徴には、以下の3つのポイントが含まれている。

比強度(軽量・高強度・高耐熱性など)

新素材の大きな特徴の一つが、比強度に代表される軽量性と高強度、高耐熱性などの両立である。比強度とは、材料の強度を密度で割った指標であり、同じ重さでどれだけ大きな力に耐えられるかを示す。

比強度が高い素材は、重量を抑えながら構造的な信頼性を確保できるため、輸送機器や産業機械の性能向上に直結する。従来の金属材料では、強度を高めるほど重量が増す傾向があったが、新素材では微細構造の制御や分子設計により、このトレードオフを大きく改善している。

加えて、高温環境でも機械特性を維持できる高耐熱性を備える素材が増えており、エンジン周辺部品や高出力電子機器など、過酷な条件下での使用が可能となっている。軽量で高強度、さらに高耐熱などという特性は、エネルギー効率の向上や装置の小型化を支える基盤技術として、新素材が従来材料に置き換わる決定的な要因となっている。

環境負荷の低減

次に、新素材の重要な特徴として、環境負荷の低減に直接的に寄与する点が挙げられる。従来の材料は製造工程で大量のエネルギーを消費し、資源採掘や廃棄の段階でも環境への影響が大きかった。

これに対し、新素材は原料選定から製造、使用、廃棄に至るライフサイクル全体を見据えて設計されるケースが増えている。例えば、製造時の温度や工程数を抑えられる材料は、温室効果ガス排出量の削減に直結する。

また、長寿命化により交換頻度を減らせる素材は、資源消費そのものを抑制する効果を持つ。さらに、再利用や再資源化を前提とした材料設計が進み、使用後に価値を回収できる仕組みが整いつつある点も重要だ。

こうした特性により、新素材はカーボンニュートラルや循環型社会の実現を支える技術基盤として位置づけられ、企業の環境対応戦略において不可欠な存在となっている。

柔軟性に優れている

最後の特徴として、従来材料にはなかった高い柔軟性が挙げられる。多くの新素材は、単に形状を保持するだけでなく、曲げや伸縮、ねじれといった動的な変形に耐え、複雑な形状や繰り返しの動きにも追従できる性質を備えている。

分子構造や内部構成を精密に設計することで、応力を局所的に逃がし、破断や劣化を抑える仕組みが組み込まれている点が特徴だ。近年は、柔軟性を保ちながらも高い熱伝導性や耐久性を併せ持つ素材が登場し、用途の幅が大きく広がっている。

これにより、折り曲げ可能な電子機器や、身体の動きに追従する医療機器、振動や変形が発生しやすい自動車部品など、従来は硬質材料に依存していた分野でも設計の自由度が向上している。柔軟性を軸とした新素材は、製品の形態や機能を根本から変える可能性を秘めている。

新素材の課題

しかし、依然として量産化に至っていない新素材が多く、開発コストの壁、廃棄における法制度の整備といった問題を解消していく必要がある。

技術開発コストがかかる

新素材における1つ目の課題は、技術開発コストの高さである。基礎研究から実用化に至るまでには長い時間と多額の投資が必要となるだけでなく、成果が不確実である点も企業にとって大きな負担となる。

新素材の開発は、分子や結晶構造の設計、シミュレーションによる特性予測から始まり、試作と評価、さらには高温や高圧など過酷な条件下での耐久試験を経て初めて実用段階に進む。これらの工程は数年単位で積み重ねる必要があり、研究開発費は膨らみやすい。

さらに、試験段階で優れた性能が確認されても、量産に移行すると品質のばらつきや歩留まり低下が発生しやすく、安定生産を実現するためには専用設備や高度な品質管理体制の構築が不可欠となる。

資源不足

新素材における2つ目の課題は、、原料となる資源の不足である。多くの新素材は、高機能化を実現するために特定のレアメタルやレアアースを必要とする場合があり、これらの資源は埋蔵量が限られているうえ、産出地域が一部の国や地域に偏在している。

その結果、需要の急増に対して供給が追いつかず、価格が大きく変動しやすい構造を抱えている。また、石油由来に依存しない素材として期待されるバイオマス系原料についても、農地利用や森林資源との競合が課題となる。

原料生産が拡大すれば、食料供給や生態系保全への影響が生じる可能性があり、単純に再生可能という理由だけで利用を拡大することは難しい。こうした資源制約は、新素材の安定供給や長期的な普及に影響を及ぼす要因であり、代替原料の探索や使用量削減を前提とした材料設計が求められている。

サプライチェーンが不安定

新素材における3つ目の課題は、サプライチェーンの不安定さである。一部の新素材は、原料や中間材料の供給源が特定の地域や企業に集中しており、地政学的な緊張や武力紛争、貿易規制、自然災害などの影響を受けやすい構造を持つ。

その結果、突発的な供給停止や納期遅延が発生し、計画的な生産が困難になるリスクが高い。さらに、新素材は製造工程が高度かつ分業化されていることが多く、原料の精製から加工、最終製品化まで複数の工程が密接に連動している。

このため、特定の工程や部材が滞るだけで、全体の生産ラインが停止する恐れがある。既存素材と比べて代替先が限られている点も不安定性を高める要因であり、安定供給を実現するためには調達先の多様化や生産拠点の分散が不可欠となっている。

リサイクル・廃棄システムが未整備

新素材における4つ目の課題には、リサイクルや廃棄の仕組みが十分に整備されていない点が挙げられる。プラスチックや金属は長年の利用を通じて回収ルートや選別技術、再資源化インフラが確立されてきたが、新素材は性質や構造が従来材料と大きく異なるため、既存の処理施設では対応できない場合が多い。

既存規格を前提としたリサイクル工程に新素材が混在すると、再生品の品質低下や工程トラブルを引き起こす恐れもある。さらに、技術の進展に対して法制度や業界ルールの整備が追いついておらず、回収主体や処理基準が明確でない点も問題だ。

その結果、企業は将来の責任範囲が見通せず、専用設備や回収網への投資に踏み切りにくい。新素材の普及を進めるためには、技術開発と並行して、回収から再利用までを含む社会的インフラの整備も不可欠といえる。

既存素材との代替による満足度低下やコスト増

新素材におけるサイトの課題は、既存素材からの代替によって利用者の満足度が低下したり、製品コストが上昇したりする点が挙げられる。長年使われてきたプラスチックや金属は、加工性や質感、耐久性において高い完成度を持ち、利用者もその特性に慣れ親しんでいる。

新素材がこれらの感触や使い勝手を十分に再現できない場合、違和感や不満につながり、市場での受容が進みにくくなる。例えば、代替素材が熱に弱い、独特のにおいや表面のざらつきがあるといった点は、性能面だけでなく感覚的な評価を下げる要因となる。

また、コスト面でも課題は大きい。既存素材は長年の量産実績によって製造効率が高く、価格競争力を持つ。一方で新素材は、生産規模が小さい段階では製品単価が高くなりやすく、価格上昇が導入の障壁となるケースが多い。

新素材の開発を行う企業

最後に、新素材の研究開発を行う企業事例について紹介したい。

東レ株式会社

東レ株式会社は、1926年に設立された日本の素材メーカーであり、繊維から樹脂・フィルム、炭素繊維複合材料などの高付加価値材料を展開している。

研究開発は有機合成化学・高分子化学・バイオテクノロジー・ナノテクノロジーをコア技術として位置づけ、基盤技術の深化と融合を進めている。炭素繊維ブランド「トレカ®炭素繊維」シリーズは1971年に商業生産が開始され、航空機用途を含む複合材料分野で用いられている。

三菱ケミカルグループ株式会社

三菱ケミカルグループ株式会社は、日本の総合化学メーカーグループであり、高機能材料を含む幅広い事業を展開している。

植物由来原料イソソルバイドを主原料とするバイオエンジニアリングプラスチック「DURABIO™」を開発しており、高い透明性に加えて耐光性や表面特性などを特徴としている。DURABIO™はモビリティ分野の外装部品での採用事例が公表されている。

また同社は、植物由来のポリカーボネートジオール「BENEBiOL™」を開発し、ポリウレタン樹脂の主原料として合成皮革や塗料・コーティング剤などで用いられる用途を示している。

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社はパルプ・紙を中心に事業を展開する製紙会社であり、木質資源を基盤としたセルロースナノファイバー(CNF)の開発と量産・用途開拓を進めている。

CNF製品はcellenpia(セレンピア®)として展開され、木を構成する繊維をナノレベルまで解繊した素材として、軽量性に加え、高い弾性率や温度変化に伴う伸縮の小ささ、ガスバリア性などの特性が示されている。

同社は2013年に岩国工場で実証設備を運転開始し、2017年に石巻工場で量産設備を稼働させるなど、生産基盤を整備してきた。またCNF強化樹脂「セレンピア®プラス」は、ヤマハ発動機の水上オートバイやスポーツボートの2024年モデルにエンジンカバー部材として採用された。

住友化学株式会社

住友化学株式会社は1913年創業、1925年設立の総合化学メーカーである。農業・ICT・モビリティ、医療、基礎化学品などの事業を展開し、素材開発と事業化を進めている。プラスチック資源循環では、リサイクル技術で得られるプラスチック製品の総合ブランドMeguriを2021年に立ち上げた

また2022年には、特殊配合技術で高い剛性を持たせた容器包装向けポリエチレンのスミクルを開発し、基材層とシーラント層を同一樹脂系で構成するモノマテリアル化を可能にすると説明している。これにより、使用済み容器包装のマテリアルリサイクルにおける水平リサイクルの実現に貢献している。

大阪瓦斯株式会社

大阪瓦斯株式会社は1905年創業のエネルギー事業者であり、都市ガス供給を中核に、材料・エネルギー関連技術の研究開発も進めている。同社は光学制御技術や炭素材料技術を活用し、建築・インフラ分野に向けた機能性素材の開発を行ってきた。

その代表例が放射冷却素材SPACECOOL®である。これは太陽光の吸収を抑える高反射設計と、熱を宇宙空間へ放射しやすい波長帯へ制御する光学構造を組み合わせた材料で、直射日光下において表面温度を外気温より最大約6℃低く保てるとされている。倉庫屋根やコンテナ、建築資材としての利用が進み、空調負荷の低減や作業環境改善に寄与している。

ユニチカ株式会社

ユニチカ株式会社は1889年設立の素材メーカーであり、高分子事業としてナイロン・ポリエステル系フィルムや各種樹脂、生分解性材料などを扱う。バイオマス素材テラマックは、ポリ乳酸(PLA)などのバイオマスプラスチックを同社が加工・設計した樹脂製品として展開されている。

2012年には、テラマック比率を約80%以上としつつ、耐衝撃性と耐熱性をABS樹脂レベルに高めた射出成形用樹脂を開発したと公表している。テラマックは電気・電子機器やOA機器部材などの用途を示している。

まとめ

新素材は、従来材料の延長では到達できなかった性能や機能を実現し、エネルギー効率の向上や社会インフラの高度化を支える中核技術として存在感を高めている。一方で、信頼性評価の確立、安定供給体制の構築、使用後を見据えた制度整備など、技術以外の課題も多い。

今後は、材料としての優位性だけでなく、市場ニーズや社会課題との適合性を踏まえ、研究成果を早期に事業化へ結びつける視点が不可欠となる。新素材を実装可能な技術へ昇華できるかどうかが、競争力を左右する重要な分岐点といえるだろう。

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